弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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保護及び対策課その参拾七~ラブコメ編~

参拾七
「ただいま。」
「おかえりぃ~」
 無駄に疲れて家に戻ると、まず最初にソファに座って、トリックの背中を撫でているきと姉に出くわした。雑食獣が肉食獣を手なずけているのは、月とスッポンのトーキングタイム的に興味深かったが、それよりも少し不可解な事実に気づき訊ねてみた。
「想は?」
「お買い物だって。」
 ふむ。それなら確かに狼に乗ってスーパーをうろつくのは、生肉を咥えてサバンナを歩き回るようなもんだから単身で行っても不思議ではないかも。
「ただいま、トリック。」
 膝を曲げて、ぐだりと顎を床につけているトリックの頭を撫でる。すると、目を開けて短く吠えた。
 いつもそれだけで終わるから、今日もそれだけかと思い、立ち上がるったんだけど、トリックが尻尾を千切れんばかりにぶんぶんと降って一緒に立ち上がって、その鼻先をぐいぐいと押し付けてくるから思わずしりもちをつきそうになる。
「ちょ……どうしたの?」
 きと姉もきょとんとして、こちらを見ていたが、何か合点がいったかのように微笑んだ。
「一日で懐かれるのは難しいわよね~」
 本人はアラスカにふる吹雪らしく、全く気に留めてもいない。なんとなく私は今のきと姉の発言に引っかかりを感じた。
 やがて、トリックに押されるように、廊下に出てしまった。
「ごめん、きと(ねえ)。この子遊んで欲しいみたい。」
「あら、そう。遊んでらっしゃい~」
 そう言って、軽く手を振ってきた。
 私は、そのままトリックと一緒に私の部屋に向かった。まさかこの子を部屋に招くことになるだなんて、世の中予想がつかないものね。そもそもこの家に狼がいることすら不可解なんだけどね。
 いろいろと本やら漫画やらをところせましと詰め込んだ本棚が二つほどあるのとテレビと机とベッドがあるだけの殺風景な私の部屋。娯楽とかそういう系のものは、そういう部屋があるから困らないし、大体の時間は居間かそこで過ごしてきていたので、ここは大して気に留めていなかった。
 私が後にこの部屋に入ると、トリックは部屋の真中におすわりをしていた。……狼がするものなのかしらこれは。
「どうしたの?」
 ベッドに腰掛けながら訊くと、くぅーんと頼りなく喉のどこかで鳴いた。いつもの燦然としていた蒼い瞳に翳りがあるような気がする。
 想と違って、彼の意図が掴めずに見習いの飼育員みたいに困っていると、トリックがちらちらとテレビの方を見ているのに気がついた。私がテレビに近づくと、トリックが嬉しそうに吠えた。分かりやすいんだか、分かりやすくないんだか。
 テレビの電源を入れると、ほのぼのと年金で暮らしている老人が見ているような番組が映った。トリックが何も言わない(?)ので、チャンネルを回そうとして、手を伸ばすと短く吠えて牽制された。本当に分からない……。
 ベッドに再び腰掛けて、トリックと一緒にぼうっとそのニュース番組みたいな番組を見ていた。なんだか私には理解できない単語をつらづらと並べて、どこかマイナーな政党の議員の汚職問題が取り上げられているところでふいと眠気が差してきた。これはいい逆目覚ましを発見できた。後でお礼に何かしてあげないと。
 うつらうつらとしていると、トリックが短く吠えた。私は慌てて異次元空間に踏み込もうとしていた意識をかき集めて、テレビの画面に集中した。
『山に大量の動物の死骸』
 そう味気の無い字で書かれたその言葉を見て、私は思わず息を呑んでしまった。
 分かる単語を並べて、その全体の意味を推定してみると、概要はこうだ。
 ここからそう遠くない釣果(ちょうか)山に、たけのこ狩りに来ていた三郎田四郎(さぶろうたしろう)さん(56)が、変な匂いをかぎつけて、周囲を探ってみたところ、小動物から熊などといった大型動物まで、ありとあらゆる動物の死骸が見つかったそうだ。内臓は肝臓だけ引きちぎられるように無くなっており、その死骸の中には狼の物もあったらしい。
 どうやら、トリックが気になるのはこの狼の死骸らしい。さっきから私の制服の裾をぐいぐいと顎で挟んで引っ張ってくる。
「……何処に訊きに行けばいいのかな……。」
 そんな事言われても……なんだけど……実を言うと。
 それでもこの狼らしくない、つぶらな瞳を見ていると、それと同じような理性を秘めた眼を持っている身としては放っておけなくなる。
 カップラーメンに化薬がついていないくらい困った状況に、私が首を捻っていると、トリックが短く吠えた。慌てて思考を日本海溝から引きずり出し、テレビを注視する。
 情報提供はこちらまで。ぜろいちにいぜろ……フリーダイヤル……。
「逆情報提供ってありなのかな。」
 そう訊ねてみると、トリックは首を横に振った。
 え?そういう意味じゃないの?
 突然、トリックがぐでんと腹ばいになった。あぁ……もしかしてグレちゃったかな。
「ご、ごめん。どうしたの?」
 慌てて近くに寄ってみると、また殺傷能力二倍増の瞳で見上げてくる。よく分からない……。
 すると、とうとう痺れを切らしたのか、トリックは立ち上がると、一目散に私の部屋から出て行った。
 私は、自分の田んぼにトラックが突っ込んだ光景を見た農家の人みたいに、ぽかんとしてそれを見ていたわけだけど。なんとなく裏切られた感がして、慌ててその後を追った。
「ただいま。」
「あ、おかえり……。」
 単に想が帰ってきていただけだった。その横にトリックがピッタリと寄り添っている。
「何かトリックがいいたげだったけど……」
「え?珍しいね。お姉ちゃんに何か訴えようとするなんて。」
 いろいろと詰まった袋を玄関の傍に置いて、想はトリックの頭を撫でる。
 一瞬、トリックと視線があったけど、その簡単に胸中を見透かされそうな蒼い瞳には、意思が通じない私に対しての忌みは全く含まれていなくて、むしろ感謝の念が反映されていたような気がしたのは、自惚れだろうか。胸が痛んだ。

 ……またか。
 渋々と顔をあげると、社会教師の顔がある。どうして毎日社会の授業が入ってるのかな……。
「桜木、」
「先生……もう飽きました。」
 今度は最短記録で教室内が沸いた。いつもより威力は弱いが、まぁいいだろう。
 社会教師は決まり悪そうに目を細めると、集中しろとの旨を私に言ってから、授業に戻った。はぁ……今日はどうも調子が狂いそうだ。
 幸いにも、二度寝に入る前に福音が鳴った。正確には、至福の時間と思わせておいて、実のところは自由を束縛される前の心残りをなくしておく為の自由時間のようなもので、その後の授業の眠さを格段に上昇させる、香辛料のようなものだと私は定義している。ゆえん、休み時間で遊びはしゃぐ奴は、授業中で寝ていることが多い。
「次何……」
 にしても、そんな風に意識はしていても、休み時間に対してアクションをしていないのに眠い私は何なのだろうか。
「次は文化祭の係りのアレだよ。」
 酸素が室内からじっくりと失われていくと、眠るようにして意識を失ってそのまま命も消えていくらしい。脳内の酸素が不足してそんな風に感じるらしい。体育館での講義がそんなにも眠いのはそれが原因だろうか。密室で生徒(+職員)がパンパンに詰まってたし。
 文化祭ときくと、あのいやな空間が反芻されていやだ。
「あれって何?」
「係り会議ってやつ?」 
 あぁ、そんなの決めてたっけ。
 あの会合の所為で、文化祭開催への意欲が、記憶の隙間を埋めるのに使われることになってしまった。全く、逆効果じゃないの。
「うちの学年今年何やんの。」
 主に活動するのは、部活動としてと、学年として。去年の文化祭に関する記憶は、例のガイダンスと称した、文化祭に対する意欲の減退が目的の校長の長話しか覚えていない。部活で何をしたかですら覚えていない。結局腹痛の装ってやすんだっけ。
「ホントに無頓着ね。」
「仕方ないでしょ。あのミジンコくらいなら殺せる正義の心が不足してるんだから。」
 夢で出てきたヒーローのせりふをそのまま使用すると、友人は怪訝そうな表情を向けてきた。
「どういう意味……?」
 どういう意味だったかな。
「うん。キラーハートオブジャスティスって奴?」
「…………悩み事があるの?」
 正義の殺人心。いわゆる、自己正当化、自己保身とか、正当防衛とかいうやつ。本人はこれがそれのためになるからこれをする、と堅く信じていて、そういった人が迷惑そうにしていることをする。
 私がこの言葉に秘めた思いは彼女には伝わらず、それによって得られた産物は、怪訝な表情と、その副産物である眉間の皺だけだった。
「そんで、私って何係りだっけ」

「ここか……。」
 「3-4」と表示された白い看板が垂れ下がっている。
 黒板を前方と定義するならば、後方にあたるドアから入って、誰にも気づかれないように後ろの席に座る。特に指定はなさそうだ。ミッション完了。
 チャイムが鳴ると、どういう因縁かあの社会教師が教室に入ってきた。顔がむすっとなるのを抑えることができなかったが、まぁ担任でないだけマシだろう。
「桜木、号令。」
 前言撤回。担任だったら恐らく痰の海で溺れ死んでいると思う。
「……きりつ」
 前方百八十度から感じる視線を高性能な「シカト」という名のシールドで弾き返しながら、羞恥心を和らげるために、下を向きながら言った。
 そんなてきとーの極を極めた号令にも反することなく、クラスにいる生徒たちが立ち上がる。
「れい」
 おねがいしまーっと声が掛かって、私が何も言わなくともどたどたと席につく。
「えっとですね。ここは大道具として集まってもらったわけなんですが……」
 べちゃっと、つき損ねた餅の様に顎を机について、即睡眠の形態に入る。興味零。関心零。内申零でもいい。構わない。
 分かってる。私は僻んでるんだ。昨日のこと。あの狼の為に何も出来なかった。そして、彼と唯一意思を通じ合える想への嫉妬。
 想にトリックがどうしたのか訊いてみたものの、想は首を捻って、
「なんでもないって」
 と言った。到底嘘だとは思えなかった。
 トリックは私にだけ伝えようとした。どうして。
 あの時の視線が私の胸を痛いと感じないほど抉った。あそこまで感情を眼で表現できる狼も彼だけだろう。純粋だ。人間なんかと比べて数倍も数百倍も。
 動物の大量虐殺。内臓を抉り、頭を潰し、脳漿を撒き散らし、目玉は別の場所で潰す。胃の中に潰した頭を入れて、近くの木につるし、足は全て引きちぎってどこかの家の郵便受けにいれる。
 気になったのでパソコンで調べてみると、あのニュースで伝えていたよりも酷いこの事件の全貌が見えてきた。その事実が、重みを増して圧し掛かってくる。
 もはやため息をつくしかない。
「というわけで、桜木。」
 ゆらりと顔を上げると、教卓に両手をついて演説の体制になっていた社会教師がこちらをじろりと睨んでいた。
「いいな?」
「え……。」
 事情が飲み込めず、育児放棄されたシロクマのようにキョロキョロと皆の顔色を伺う。なんていうか、皆安堵というか、安心の色を顔に浮かべている。
 黒板に目をやると、でかでかと汚い字で『責任者』という字がかかれている。
 ……もしかして……こういう展開……。
「……はぃ……。」
 私はもう行き場を無くしてそう言うと、周囲から安堵の嘆息が聞こえてきた。社会教師は意外そうな顔をして、きまりが悪そうに私の名前を黒板に書いた。
「……じゃ男子はどうだ。」
 どうやらそのことで皆剣呑な雰囲気になっていたらしい。委員会とかでの委員長決めの時も、すざまじい重圧に押しつぶされそうになる。こういう時の譲り合いも人間らしいといえば、人間らしい。
 そんなとき、すっと手がだらしなく上げられた。おぉっ、と皆がまた感嘆の声をあげ、私はその手の主を見ると、それはつまらなそうに頬杖をついた武寛その人だった。
「はい、んじゃ竹島でいいな。」
 この期に及んで、まさか自分が!っといって手を上げる輩も居まい。
 訳もわからぬまま激流に呑まれて、知らない人と無人島に流されたような気持ちで前に出る。何故か武寛の顔には「やれやれ」と浮き出ていて少しむっとなった。
「そんじゃあ、自分たちが何を作りたいか決めて、どんな材料を使うかこのプリントに書いて提出してください。」
 一番前に居る生徒に「ご愁傷様」といった感じの視線を受けて、私はこの任の重さに気がついた。去年は確か、立場が逆だった様な気がする……。
 授業の終わりに、作るものが決定し、それぞれのグループからプリントが集められた。いろいろと入手が困難そうな物品が並んでいたが、私には気にならなかった。いや……呆然としていたといった方が正しい。
 これを責任者二人で買出しに行くのだ。

「な、なんであんたも責任者になったの?」
 私は、立ち去り際に訊いてみた。相変わらず武寛は無気力をこねて丸めてそのまま入れたような瞳をしている。
「なんかみすぼらしかったから。」
 そっけなくそんなことを言われて、私も黙っているわけには行かない。
「みすぼらしいって何?」
「ん。寝てるところを襲われて寝たまま鍋にされたカモみたいな理不尽さを感じたからな。一緒にダシになってやろうと思ってやったんだよ。」
 武寛はぶっきらぼうにそう言った。
「……ありがと。」
 なんとなくぶっきらぼうを演じているような気がしたので、私は礼を言っておいた。どっちにしろ、この任についたからには互いに同じ綱を渡っていかなくてはならない。
「か、勘違いすんな。俺だって社会の内申は欲しいんだよ。」
「ん?総合のとこにつくんじゃないの?これは。」
「うるせぇな。とにかく欲しいんだよ。」
 私は今、保対課に就いている。人員の少なさから、まだ義務教育が終了していなく、法律ではまだ働いてはいけない年齢にある私も、法をかいくぐってこうして勤めている。
 内申……か。私が普通の人だったら、今ごろどうなっていたんだろう。やっぱりこうやって内申の取り合いでもしてるのかな。それとも無気力に授業も上の空かな。
 去年一回告白されたことがある。確か同じ部活の人。
 そのとき私は、この羽根の存在に既に気づいていた。だから自信がなかった。私は人間として、人間らしい生活を送れるのか。
 綺麗な容姿をしていて、性格も穏やかだから。
 私は泣きそうになった。そんな風に見られていた。中身は大したことのない、脆い人間。そして……容姿は人間ではない。
 結局断った。少し悲しそうな顔をしていたが、そうかとだけ言って去っていった。申し訳ないと思ったか、いいことをしたと思ったか、そのときの心境は覚えていない。
 両方とも見せているのは私の外側。誰も中身を受け入れてくれないと思ってた。
 ……でも。
「どうしたの。」
 友人の声が聞こえて私は我に返った。
「え?私何かしてた?」
「え、いや……突っ立ってたからさ……もうチャイム鳴っちゃうよ。」
 私は慌てて自分の教室に向かった。

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  1. 2008/09/14(日) 21:25:35|
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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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