弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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保護及び対策課その四拾参~ラブコメ編~

四拾参
 私が先ほど破壊した部屋群は、破片とか踏んで怪我しないように(かは分からないけど
)青いビニールシートが被されている。ニュースじゃよく見るけど、実際に見てみると生々しいというか怖い。んまぁ、ここに勤めてれば、普通に見る機会はあったんだろうけどね。
 その後、田代が颯爽と(いつもよりも顔を歪ませて)現れて私の手を半強制的に、課まで連れてこられた。
 皆怒ってるかと思って、びくびくしてたけど、部屋の中には誰も居なかった。慌しく出て行ったのか、椅子が乱れている。
 そんでもって……課長の椅子で、ウサギさんが頬を机につけて眠りこけている。その寝顔を見ていると、さっきに増して武寛への感謝の念が強くなっていく。
「……どうして皆居ないの?」
 私がきょろきょろとそんな課の中を見回しながら言った。なんというか……あまりに不自然だったから。
 そうすると、田代は困ったように肩を竦(すく)めた。
「知らん。」
「え……なんで……?」
 私が言葉を失うと、田代は黙って眠りこけているウサギさんに近づいていくと……耳を鷲づかみにして思いっきり引っ張った。思わず目をつぶる。
「わあぁぁあああああああああああああああああああ!!」
 可哀想に……安眠をそんな形で邪魔されるなんて。
 田代は泣き喚くウサギさんを放置し、近くにある椅子を適当にとって座った。そして、また適当に近くにある椅子をとると、私に向かって蹴り飛ばしてきた。ころころと車輪を用いてこっちへ来た椅子を両手で丁寧に受け止める。
「ぅぇっうぇっ……」
 田代の視線に制されるようにしんなりと、泣くウサギさんを眺めていると、ようやく泣き止んで、両目をぐりぐりと両手で涙を拭う。んん……保護欲が沸いてくる……。
「ん……あ、主やっと来たの。」
 そう言うと、デスクから降りると、とことこと私と田代の中間地点まで行くと、その近くの椅子に飛び乗った。ホントに。ちっこいんだもん。
「あ、うん……。ゴメン忘れてた。」
「仕方ないと思うよ。あんとき主わんわん泣いてたし。」
 ウサギさんがしれっと言ったもんだから、田代の視線が痛い。どうせ泣き虫ですよ。
「何の騒ぎ?」
 ウサギさんが耳をぴょんと立てて、そう訊いた。縦に長いだけあって耳がいいのかな。
「テロだ。ストレス解消を兼ねてのな。」
「違うってば!本当に止まれなかっただけなの!」
 とか、田代が冗談に聞こえない冗談を言うもんだから、私はウサギさんにご認識されないように、間髪入れずに訂正する。ウサギさんは勘違いをすると、徹底的にその勘違いを貫く人だから。
「主、なんかしたの?」
「ん……ここに突っ込んだ。」
「突っ込んだ?」
「そう、とまれなくって突っ込んだの。」
 私が必死でウサギさんの面白い方面への思考を食い止めていると、背中で翼が存在を強調するように羽ばたいた。
 それを見て田代が眉を顰める。
「ん、そういえば出しっぱなしだったし色も変だが、なんかあったのか。ストレスか。」
 ストレスに結びつけるのが好きだね。
「知らない。」
「ふん……まぁそれはいいとしよう。」
 首を振ると、田代は話の軸をずらした。
「見てのとおり、今課には俺たちを除いて誰も居ない。警部の話によれば、集合時間の五時くらいには全員居たみたいなんだが、徳島刑事と夕食の打ち合わせをして、帰ってきたら居なくなっていたらしい。」
 徳島刑事と夕食の打ち合わせ?なんだあの人徹底的に尻に敷かれてるんじゃない。
「俺は単に遅刻しただけだ。」
「何で?レミとか涼姉さんとかと一緒じゃなかったの?」
「ん……いや、今日は大学でな……」
 ちらりと視線を逸らす。ん、隠し事するなんて珍しい。嘘をつくのに慣れてないのか、なんかラッコがサザエを食べてるくらい違和感がある。
「んでもって、主が遅刻ね。そんでもって私たち三人だけになっちゃったのね。」
 ウサギさんがそう締める。ふぅん……。
「それで?」
「ん……さぁ。知らん。」
「えぇ……何するか定まってないの……。」
「どうしようもないだろうが、これは。人員不足だ。」
 人員不足って、そんな大掛かりな招集だったんだ。霧屍隊が着てないだけ、公務だけで対処できることなんだろうけど。
「ところで主、その翼どうやったらそうなったの?背中破けてるし……弁償してね。」
 やっぱり。
「ん……鬱になったら出てきた。」
「へぇ……鬱……どういう経緯で鬱になったの?」
「え……」
 それは課では決して口にしまいと心がけてきた、というか肝に銘じた禁忌であって、その禁忌作成にあたっての直接的な原因である張本人に話すのは抵抗が生じる。
 杞憂になった理由、それは武寛の事情が茨の如く絡み付いていて、それを話すことは武寛の腫れ物と化した過去に塩を撒くことと同じ。そんな事は、相手が誰であろうとしたくはない。
「まぁ、いっか。うんとね。その翼がそうなったのは、田代の影さん召還みたいな……粒子がキレたというか、力が解放されたというか。うん、ぱわーあっぷしたんだと思う。」
 影さんっていうのは、田代が自らの体内に住まわせている天文学数字だけ居る粒子を具体化した、田代の分身のこと。性格がそれぞれあるんだけど、皆つかみ所がないというか、変なのが多い。
 それと同義ということは、やっぱりそれみたいにこの翼にも人格が宿るのかな……。
「でも、これ仕舞えないんだけど……んっと、言う事を聞いてくれないの。」
「えぇ……なんでよ。」
 怒り出すウサギさん。いや、逆切れされたって……。
 と、思ったらいきなり合点のいったような顔にる。
「あぁ……パワーアップじゃなくて、単に怒ってるだけかもね。」
「怒ってる?」
 そう言ってから、やっぱりという思いを抱いた。
 あの時、武寛の話を聞いたとき、私は何と言ったらいいのか分からず結局そのまま別れてしまった。互いの思いを共有しているから、そんな私の複雑な感情を読み取って怒ったのかもしれない。
 悩みを解決させてあげようとして、結局いつも助けられてる……私に。
 まるで難問の数式に直面した数学者みたいだ。過去の傷(トラウマ)の束縛から解放されるなんて容易なことではない。第三者が介入したとなると尚のこと。
「めそめそしてたって何も解決しやしねえさ。そんなことよりも、よくあんな派手に吹き飛ばして無事だったな。」
 田代が他人事の様に、私の悩みを記憶の淵に追いやる。
「んー、私は現場を見てないからなんともいえないけど、あの衝撃からして無傷じゃ絶対にすまないと思うな。一応、耐久力は一般人と同じくらいでしょ?」
 ウサギさんが椅子に手をついて、身を乗り出してくる。
 確かに……あんなラジコン飛行機が全速力で隣の家の窓ガラスに突っ込んだみたいに、ここに突っ込んだのに、無傷というのは少しおかしいな……。
「なんか色々と問題は山積みみたいね。まぁ、それは後で解決できるからいいや。そんなことよりも!」
 ぴょんと、ウサギさんが椅子から飛び降りた。そのまま足を滑らせてすってんころりんなら、喜劇もいいところだけど、生憎と空気がそんなこと許してくれない。
「皆集まったときに話すつもりだったこと、今ここで話しちゃうよ。」
 あぁ、そのためにここ来たんだっけ。目の前の不可解なことが大きくてすっかり忘れてた。
「知ってるかどうかは知らないけど、あの一課が捜査してる大量虐殺事件?あれ、うちも担当になったからね。」
「も?」
「うん、一課と合同。」
 ウサギさんはその合同という言葉が気に入ってるのか、嬉しそうに頷いた。
「んで……なんだ、その大量虐殺事件ってのは……。」
 田代が面倒くさそうに呟いた。もちろん私は知っている。あのトリックが教えてくれたあの事件のことだろう。
 最初は動物だけだったけど、最近は人間の被害者も増えてきている。今週だけで二人。中学生の男子と、老婆だったと思う。
「へぇ……んで、なんでそれが俺たちんとこ回ってきたんだよ。」
 事件の概要を話し終わると、田代が怪訝そうに顔をしかめていった。
「うん?もちろん、失敗体が絡んできてるから。」
 勿論、といった感じでウサギさんが言う。うぅん……久しぶりの正式辞令か……。
「そんでもって、明日から本格捜査開始なんだけどね……これじゃあどうしようもないよね。」
 がら~んという擬態語がピッタリな室内。乱暴に蹴り飛ばされたのか、倒されている椅子もある。んー……私としては、皆がウサギさんが居ない隙に皆で仕事をボイコットしたような気がしてならないんだけど……。
「まぁ……明日になれば帰ってくるかもしれないし、明日のことは明日考えようか。私まだ眠いし……。じゃあ今日はこれで解散ね。」
 ウサギさんはそう言って手をひらひらと振って、課長の椅子に座るとデスクに頬を当てて寝息を立て始めた。
「はぁ……どうしたんだろうね……皆。」
 警視庁から出るための出口に向かう途中、私はため息混じりに言った。ボイコットするのなら、辞表を出しそうな人達の典型だったから、ボイコット説は私の中では既に棺の中。
「どう考えても、何かちょっとしたことで唆されるような奴らじゃないからな……、それにあの狼も一緒に居なくなったのも気になるな。あれは主の命令には逆らえない筈だから……そうなると、想の意思で一緒に居なくなったのかも知れないな。」
 田代は目を細めて前方を凝視しながら言った。
 確かに……あの蒼眼狼さんは想の厳密な下僕だから、仮に全員が攫われたとして、想が拒めば、その要求に応えなければならない。それならば、想だけでも助けることはできるはず……。
「ったくあいつら何を企んでんだか。」
 私が思考の渦の中で右往左往していると、田代は吐き捨てるようにそう言った。
「企んでるって?」
 私は、私より少しばかり背が高い田代の眼を見上げて訊いた。
「知らん。ただ、俺に隠れてなんかしてるのは明らかなんだがな……。」
「へぇ……」
 そこで、田代も私の視線に気づいてそれを交差させる。
「主は何か知らないのか。」
「知らない。」
 私が首を振ると、田代は何も言わずに視線を元に戻した。それから嘆息する。
「はぁぁ……なんでいつもこういう役なんだか……」
「こういう役って?」
「子守りだ。」
 背中の翼が面白そうに羽ばたいた。んー……腹が立つなぁもう。
「しかし……その制服を破るなんて並じゃないな。並みの刃物じゃ切れなかったぞ、それ。」
 田代がそれを見て、(意図が見抜けなかったのかもしれない)言った。確かに、これはなんとかかんとかとか、かなり頑丈な布でできているはず……。
 そんなこんなで、警視庁から外に出ると、そんな話してもいないのに、空は黒に染まっていた。一等星がまばらに雲の間に見える。
「さてと……主はこっから帰んのか。」
「うん。そうする。」
「家壊すなよ。あれはあれで高級なんだから……」
「……壊すなら近くのマンションにしとく。」
「訴えられるぞ。」
 半眼で睨むと、田代は苦笑を浮かべて手を挙げて歩いていった。私はむくれてその後姿を見ていたけど……きっ、と太陽が消えた空を睨んだ。それに応えるように背中の羽根が羽ばたかれる。
「今度はちゃんと止まってよね……」
 そう呟いて地面を蹴ると……景色が後ろに吸い込まれていった。

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  1. 2008/10/02(木) 21:29:29|
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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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