弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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保護及び対策課その四拾四~ラブコメ編~

四拾四 
 気が付いたら夜が明けていた。乾いた小鳥の囀(さえず)りに、朝の到来を告げる朗らかな太陽光、テレビから流れるバラエティなニュース……。そんでもってコーヒーの匂い。
 限りを尽くして朝が来てることを主張している。
 両手をついて体を起こし、目やにが溜まった目尻を人差し指の付け根の関節で擦る。
 欠伸を漏らしたところで、ようやく自分が私の家の居間のソファで寝ていたことを自覚し、焦点の定まらない視線を壁に向けて、昨日のことを思い出そうとする。
「……。」
 記憶が曖昧というか、半分以上抜け落ちてる。あの警視庁での会合のあと、田代と別れてびゅーん、ってこっちにきたのは覚えてるけど……。
「あら、おはよう。」
 きと姉が台所から、コーヒー豆の匂いが強烈なカップを持って現れた。
「おはよ……。昨日、私どうしてた?」
「えぇ……?覚えてないの?」
「うん。覚えてない。」
 私がそう言うと、きと姉は呆れたように目を眇めた。それから、静かにソファに座るとコーヒーのカップ(私のやつ)を両手で包むようにもって、冷ますように息を吹きかける。それにあわせて、コーヒーの水面が揺れる。

「私が寝たときには帰ってなかったから、よく分からないけど。朝起きて来てみたら、貴女がここに寝てたから、よっぽど疲れてたのかなぁって……。」
 きと姉の説明を受けながら、ちらりと肩越しに後ろを見ると、そこには普通に後ろに広がっているであろう光景。翼はきちんと収納されていたらしい。
 あぁ……まだ眠い。
「朝御飯は?作る?」
「あっ……私が作る。」
 腰を浮かす兆候すら見せずにきと姉がそう訊いたので、私は慌てて返事を返した。作る気はあるんだろうけど、作らせたらどんなのが出てくるのか分かったもんじゃない。料理修行時代に入る前の私よりも酷いものが出てくるに違いない。それこそ、エビをレンジでチンしたのを皿に載せるだけの、手抜きの極みと言うか、無知の極を極めた様な料理が出てくる可能性も否めない。
 いつもどおりの定位置、流しの前にエプロンをして立つ。そんでもってぼーっと、しばらくそのステンレスの光沢を見ていた。何か忘れてることがあるような気がする。
「あぁ……そういえば。」
 そういえば、なんか今日から捜査だとかウサギさんが憤ってたような気がする。うん、それこそ大好物がハンバーグの子供がはじめてステーキを食べて、それ以来好きになってしまった子供が、ハンバーグを見かけたときの様に。
 どうでもいい比喩はいいとして、壁に掛けられた時計に視線をまわすと、九時を少し回っていた。
「あぁ……今日、課に出なくちゃいけないの。きと姉、自分で朝御飯作って食べれる?」
 そう言うと、きと姉は驚いたようにこちらを振り向いた。
「え……あぁ、いいけど。大丈夫?朝御飯食べなくて。」
「うん。多分。死にどうになったら食べるから大丈夫。」
 そう言ってから、自分の服装を見下ろすと……昨日の制服のままだった。
「あれ……制服背中破れたまま?」
「うん?ちゃんと塞がってるわよ。」
 背中のひんやりとした感覚が無いことに気が付いて、きと姉に背中を見せると、きと姉はなんでもないように言った。手にしたコーヒーは大分量が減っている。
 弁償しなくて済むと、胸をなでおろしつつ、この物理の法則を完全に無視した現象についてちょっと考える。
 ……………………はぁ。
 答えなんか出るわけ無いし、いまでは人間の理解を超えた現象なんて幾多も発生している。そんな中でそんな現実的に考えても答えなんかでるわけないもんねぇ……?
「そんじゃ行って来ますよっ。」
「はぃ~行ってらっしゃい~」
 今日もまた暑いこと。

 頬を切る風が心地よくて、ついつい夢心地に入って墜落しそうになる。堕になったんだか、聖になったんだか分からない昨日の金色の翼ではなく、いつもと同じデフォルトカラーの翼。やっぱりこれが一番。
 警視庁のビルにたどり着くと、昨日突っ込んだと思われる辺りのフロアは、大惨事というか、私が突っ込んだとは想像できないくらい、もとどおりに戻っていた。恐らく田代の筋金だろうけどね。
 課の扉は相変わらず無骨に聳(そび)えている。その中から、人の気配おぼしきものは一応するものの、多数ではない。……なんで最近過疎してきてるのかな?
 中に入ってみると……上神が本を読んでいた。……誰もいないと思って身構えてなかったから、思わずノブを握ったまま硬直するような形になってしまう。
「お、主。一時間、遅刻だ。」
 上神は私に気づくと、本から視線を逸らし居住まいを正してそう言って来た。
「い、一時間?」
「あぁ。とりあえず、僕が残って主のお出迎えをね。」
 そういいつつ本に栞を挟んで、自分の机の引出しに仕舞っている。
 裏表の無い仏頂面の田代と対照的に、腹黒い笑顔を持っている彼。実際腹黒いかどうかは抜きとして、並べてみると確かに対照的な顔つきをしている二人。
 上神は竜(ドラゴン)属性が入った粒子を持っていて、細い線の手の中には、超絶鋭利且つ、長くて禍々しく彎曲(わんきょく)している鉤爪が隠されている。その……それの召還する光景はいつまで経っても慣れないのは困りもの。
 それと、翼も持っている。私の持っている天使の様な翼ではなく、蝙蝠(こうもり)のような翼。早い話、竜の翼。
 戦闘要員と銘うたれることもあって、その爪と翼を駆使して、よく大型の失敗体と田代とタッグを組んで渡り合っている。百戦錬磨とは正にこのこと。飛べるだけで、例の翼の高速に振り回されてばかりだった私と違って、彼はその翼が生み出す音速を軽々と使いこなし、その速度に鉤爪の引き裂く力を乗せて攻撃する。これが彼の戦闘スタイル。
 いわゆる分身術を使った謝羅(しゃら)のトリックプレイには極端に弱いらしいけど、そうそうのことでは絶対に負けない。
「お出迎えって……。そんなことより、皆昨日来てなかったじゃない。どうしたの?」
 私が口を尖らせて言うと、上神は視線を逸らした。
「…………来たことは来たよ。でもね……。ちょいとやらなきゃいけないことがあったんだよ。」
「やらなきゃいけないこと……皆で?どうしてウサギさんが居ない、一瞬の隙をついて?」
「一瞬て……あれ、行ったら一時間は帰ってこないんだよ。」
 彼は呆れたように言った。
 へぇ……それは初耳だなぁ……。相当顔を出すのをサボってたみたい。
「ふぅん……ま、別に追求はしないけど……変なことしてないよね?」
「変なこと?なんかしたことあったっけかな。」
「……無いか。」
 私はため息をついて、身近な椅子に腰掛けた。誰も居ないときなら、椅子に所有権なんて存在しない。
 しかし、こんな早く出てきたのに一時間遅刻って、集合時間は相当鬼畜らしい。そんなの、朝に極端に弱い私にとっては、地獄の石積みよりも難しい問題。
「………………実を言うと、集合時間なんて無い。」
 私が思考を巡らせていた時に、上神がそう言った。その声に反応して彼の顔を見ると、うんざりしたように口端を歪めていて、深くため息をついた。
「無いって……?」
「そのまま。僕のところには連絡は来なかった。一応顔を出してみるとこの様さ。」
「えぇ……じゃあ、昨日皆来なかったの知らなかったの?」
「あぁ。僕は別の仕事をしてたからね。……副業じゃないけど。」
 ふふ、と口で笑う。
「……でも今日はあるって言ってたのに……。」
「……。」
 私が落胆したように言うと、上神は何故か面白そうにほくそえんだ。……?
「……あれ……主今日は早いね。」
 扉が開く音と共に、そんなテンションが無闇に低い(↓)声が聞こえてきた。……え?
 ウサギさんが寝惚け眼を擦りつつ、扉を開けて入ってきていた。え……えぇ?
「無いっていったけどね。僕は知らなかっただけだ。」
「えー何それ!」
 私がむくれてそう言うと、上神は面白そうに笑った。むぅんん……ムカツクなぁ。
「あれ?すらいざぁは今日来ないんじゃなかったっけ?」
「いや……今日は事故があってね。無しになった。」
 なんだそれ……結局私は最後まで上神の手の中だったのか……。
「ちなみに居ない連中だけどね。霧屍隊の人たちと一緒にロンドンの失敗体討伐に行ったよ。」
「え……」
「えぇっ!何それ!」
 絶句する私と、切れるウサギさん。そりゃそうだ。知らない内に知り合いが、自分もいける可能性があった旅行にいったって言うんだ……ここを怒らないで何処を怒る。
「主は用があったらしいし、警部は連れて行ったら現地の人に何をしでかすかどうか分からないからね……。田代は僕と残らないと、君たちだけじゃ対処できないかもしれないから残ったんだ。警部の目を盗んだのはそのため。」
「えぇ……何それ……ウサギさんはともかく、私は行けたかもしれなかったの……?」
「学校の命に関わるようなことらしかったじゃないか。」
 ……ロンドン……行きたかったのに……あの社会教師……名前くらい覚えないとどこでまたこんな妨害をしてくるか分かったもんじゃない。早めに覚えておかないと。
「えぇぇぇん……私も行きたかったのにぃ……」
 絶望する私と、わんわん泣き叫ぶウサギさん。上神は気の毒そうにそんな私たちを眺めている。さすがにやりすぎたと思ってるのかな。
「……悪いけど全部本当だからね。」
 そう言うと、ウサギさんは泣き止むのをピタリと止めると、上神に飛びげりをかました。笑顔でそれを受け流す上神。二日に一回は見る光景だけど、私はそれどころじゃなかった。
 ロンドン……行きたかったよぉ……。

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/10/08(水) 20:54:03|
  2. 保護及び対策課シリーズ
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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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