弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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千五百HIT御礼 暴風雨特別短編 聖剣vs妖刀

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戦闘描写にチャレンジしました。やはり難しかったです;

※本編(第九話まで)及び人物紹介or『黒傘の乱と文芸部』を閲覧していないと、後悔します。

続きからどうぞ
↓   ↓  ↓

 落合志奈(おちあいしな)は不安そうな目をしていた。珍しく、その目は露出すべき部位を全て露出しており、彼女の状況の深刻さを示唆している。
 そして、その視線の先に居るのは、頭に黒い布を巻きつけて、左眼だけを露出している男、黒形翔一郎(くろがたしょういちろう)。初見で見た相手に未知なる戦慄を覚えさせる容貌である。
「……本当に行くの?」
 志奈が言った。その声は、不安と焦燥が複雑に入り混じっている。
「無論。我に二言はない」
 黒形は無愛想に応えた。
 新入部員の歓迎会が済んだあくる日の月曜日の放課後。彼らは部に休部届け出して、この場所に来ていた。視線を上に少しずらせば、そこにあるのは微量の橙と見るものを焦がす白を佩びた太陽が見える。ここは屋上への階段の踊り場である。
 黒形は懐から一本の武器を取り出す。高級和紙と蒟蒻糊を用いて作られた、高級紙刀「妖刀正宗」である。黒傘の乱の時に、大分汚れてへにゃへにゃになってしまっていたが、今では今までの屈強さを取り戻していた。
「では行ってくる」
「……うん」
 黒形が正宗を一瞥した後そう言うと、志奈はとろんとした表情に戻して頷いた。
 黒形は振り向かずに、階段を登り始めた。まばゆい太陽の光にあてられた彼の姿は、何世紀も前に活躍していた戦士の姿と酷似していた。

 柳瀬姫翠(やなせきみどり)にその手紙が届いたのは、その日の朝の事である。
 いささか古典的ではあるが、下駄箱に手紙らしきものが入っていたのである。
 姫翠は小首を傾げてその手紙を手に取り、広げてみる。師匠の言っていた、「らぶれたー」という類のものだろうか。
「拝啓 柳瀬姫翠様」
 そんな堅苦しい手紙文句が、歪みのない、綺麗な毛筆の字で書かれていた。姫翠は疑問符を一層大きく膨らませる。
 手紙を更に広げると、更に厳つい毛筆字が縦書きで羅列されていた。
『果たし状
 貴君の剣の腕の程を心得ている。私は是非ともその竜の裁きとも謳われる貴君と手合わせを願いたい。時は本日の放課後。第一校舎の屋上。不純が無ければ、そこで待っていて欲しい。以上。
 追記 聖剣を忘れることのないよう』
 姫翠はその文面を読んで、首を再び傾げたあと、納得が言ったかのように頷くと、それを制服のスカートのポケットにしまった。
「どうした?」
 真治(しんじ)が顔を出した。ここのところは、彼と共に登校している。もう一人、誄羅(るいら)が居るが、先生に用事があるとかそんな理由で、この場には居ない。
「ううん。なんでもない」
 姫翠は首を振った。
 ──やはり、彼女にそんな堅苦しく老獪な文が分かるわけが無かった。大半の意味が理解できていなかった。
 彼女は勘違いを犯したのだ。この手紙は、遠まわしなラブレターだと思ったのだ。
 真治に教えなかったのは、心配されないようにとの配慮だった。今まで何回か告白をされてきているが、ほとんど上手く断れている。
 今回も、その一つだと思ったのだ。恐ろしいことに。

 目標は居た。落下防止用の柵に両手を据えて、退屈そうに体を前後に揺らしている。他ならぬ柳瀬姫翠である。
 黒形は目を眇めた。……おかしい。
(無警戒すぎる。こちらのことを嘗めているのだろうか?一応これは決闘だと知らせておいたはずだが)
 あんな頑迷な文面で、この催しが決闘だと分かる者は、読解力がかなり卓越していると思われるが、黒形はその卓越した一人なので、そんなこと分かるはずも無い。仮にでも文芸部員である。
 黒形は危うくそんな無警戒な彼女に無警戒に近寄りかけて、ふと思いつく。
(まさかこちらが気を抜いたところを狙って……?)
 実を言うと、考えすぎである。
 黒形は警戒を強めて彼女に歩み寄っていく。彼女がこちらに気づいた様子は見られないが、巧くその気を隠しているのかもしれない。何にせよ、油断は禁物である。
 だが結局、黒形は姫翠に気づかれることなく、彼女の後ろに立った。後ろといっても、五メートルほどの間隔があるが。
「待たせたな」
 相手が不意打ちを仕掛けてこないのに安堵しつつ、堂々とそう言った。姫翠は驚いたように振り向いた。やはり気づいていなかっただけのようだ。
(本気で警戒していなかったのか……本当にこいつがそうなのか……?)
 姫翠は目を丸くして興味深げに、黒形のその変わった容姿を眺めていたが、やがて何か身構えるような体勢に入った。
 黒形は左目を眇めた。別に、何か特殊な眼球が嵌まっているだとか、そうすることで気を集めて云々だとかそういったことは一切無い。本当に隻眼というわけでもない。ただの趣味である。その証拠に、隻眼は毎日入れ替わる。
(……やる気か……)
 黒形には、それが戦闘態勢に入ったように見えた。
 ──だが。
(なんか面白いな……この人。友達になるくらいならいいんだけどな……)
 姫翠は全く別のことを考えていた。というか、決闘をするだなんて、楊枝の先ほども考えが及んでいないので、当然のことといえば当然のことと思える。しかし、黒形と交友関係になりたいとは、やはり変わっている。
 だが、そんな姫翠の内情を露知らず、黒形は懐から正宗を抜いた。真剣と違い、日の光を受けても、妖艶に輝くことは無かったが、それでも紙とは思えない光沢がある。マニアが泣いて喜ぶ逸品である。
 対する姫翠は、何が起こるのかとわくわくしてそれを見ている。それがその人の告白の方法なのか……と、見入っているとも言う。まだ俗界のことをよく知らない姫翠であるから仕方が無い。
(こいつ……分かっているはずだ……それならば……)
 黒形の目が光る。
 つま先で屋上の床を蹴り、一気にわくわくしている姫翠の懐へ踏み込む。そして、間髪居れずに正宗で薙ぐ。完全な不意打ちである。本人に自覚があるかどうかは分からないが。
 カコンッ!
 しかし、黒形の予想とは裏腹に、乾いた音が響いた。だが、予想が覆るであろうとは見当はついていた。そうでないと面白くない。
 黒形が顔をあげると、再び驚いたようなになった姫翠の顔と、「聖剣えくすかりばー」と書かれた張り紙が剣刃に張ってある木刀。それが紙刀を見事に受け止めている。
「わ、危なっ……」
 黒形は目を見開いた。受け止められるであろうと思っていたが、こんなことは予想だにしていなかった。
 姫翠は利き手ではない左手で木刀を握り締めている。
 常人ではない。利き手でないほうで、黒形の紙刀の一閃を防ぐとは。一応、人を昏倒させることも可能なのである。そんな一撃を、いくら木と紙という材料の質の差があれど、片手でしかも利き手でないほうで防ぐなど、笑止千万在りえない。
 ──だが黒形は知らない。姫翠が一時期野生に還っていた時期があったことを。
 姫翠は生粋の両利きなのである。
 姫翠は左手に力を込めて、自らを討とうとしていた紙刀を弾く。黒形はその反動を上手く受け流し、正宗を握りなおす。
 もはや彼の眼に、姫翠の姿は百八十度傾いて見えていた。もしかしたら、この学校で唯一、己と対等に手合わせできる存在……。
「ちょ、ちょっと危ないよっ! そんなことするなら事前に言ってくれれば良いのに……」
「不意打ちするのに、事前に知らせる奴がいるか」
 黒形は姫翠の戯言を一蹴する。客観的に見れば、戯言ではないのだが、黒形からしてみれば戯言である。両者のこの状況理解の齟齬がこういった会話の齟齬をも作り出してしまうのだ。常人ならいい加減気づいているはずだが。
 姫翠はそれを受けると、不敵に笑って木刀を握りなおした。
「そっちが本気ならこっちも本気でいくよぉ」
 姫翠の適応能力の方が高かったようだ。まぁ齟齬の根本的原因は、彼女の勘違いだったのだが。
 黒形は露出していない眉を顰めた。
(確かに反射とはいえ、不意打ちを防いだ動きは本気とは思えなかったな……)
 本気というか、無意識であの手ごたえ。かなりの手練れである。
 なるほど、と黒形は口の中で呟き、目を少し歪めて言った。
「……こい」
 といったものの、仕掛けたのは黒形の方だった。足の筋力のあらぬ限りを尽くし前方に跳ぶと、早々に姫翠の懐を狙う。
 姫翠はこちらに向かう黒形を一瞥すると、えくすかりばーを右手に持ち替えて、後方に跳ぶ。そして柵の根元に足をつくと、思いっきり蹴って反動で黒形と正面衝突するように前方に跳んだ。
 黒形は姫翠がこちらに駆けてくるのを確認すると、正宗を両手で握り締める。今日は(黒形の中では)正式な決闘なので、篭手はしてきていない。黒形の手の体温が正宗の移っていくのがよく分かる。
 姫翠が、正宗のリーチ内に踏み込んできた刹那、黒形は両腕を床と平行に振った。両腕に鈍い衝撃。当然の様に防がれたようだ。
 互いの剣刃が接していることを確認すると、黒形は正宗の剣刃をスライドさせて、つばぜり合いの体勢にもっていく。一度やってみたかったことである。
 相手の顔が間近にある。互いの息が聞こえるほどの距離。
 だが、そんな杞憂は一瞬も持たずに引き裂かれた。
 姫翠が力を込めて、正宗を振り払う。そして、その勢いに任せて黒形の急所を捕りにきた。黒形は何とか正宗でえくすかりばーの剣刃を受け止めて、なぎ払う。
 黒形は一旦、姫翠と距離を置いた。これは真正面から戦っても、同じことの繰り返しになるだけだ。長期戦になっても、こちらの紙が傷むだけ。それならば、短気決戦が理想。
 結論を下すと、黒形は間髪入れずに再び床を蹴る。そして、姫翠の姿を至近距離で捉えると、正宗を振った。受け流された。だが、受け流された体勢のまま、再び正宗で薙ぐ。またも受け流される。もう一度、防御、攻撃、防御。
 黒形が間髪を入れずに、攻撃の壁で圧しているのだ。受け流されることを前提とした、だが一回体に入ると形勢が不利になるような適度な強さの攻撃を、間髪を入れずに何発も叩き込んでいる。傍から見れば、単調な一方的なイジメである。
 だが、黒形とて、これは決して楽ではない。受け流された衝撃を思いっきり力を込めて相殺し、さらにもう一度振りかぶる力を必要とするので、非常に疲れるのだ。正に、短気決戦用の必殺技である。
 姫翠はひたすらそれを防ぎつづける。受け流しても、すぐに追撃がくるのであれば、もはや受け流すのに意味は無い。
 それなら弾いてしまえばいい、という単純な結論を導き出した。
 姫翠は、右からの一閃を受け流した直後、右手に握っていた木刀を左手に持ち直した。そして──一歩後ろに下がった。
 無論黒形も並ではないので、素早く反応し、正宗で薙ぐ前に一歩前進して間合いを詰め、追撃を試みる。
 カァァァンッ!
 刹那、木と紙の衝突した独特な乾いた音が鳴り響いた。
 今まで握っていた正宗が、空高く舞いあがっているのを黒形は確認した。
「脇差しか……」
 あの一歩下がった時に、脇差しの体勢になっていたのだ。そこから黒形の追撃である斬撃を見切って──
「私の勝ちー」
 姫翠の方はご満悦の表情で、Vサイン。確かに事実上は姫翠の勝ちだ。武器を無くした戦士はどうすることもできない。
 だが、往生際の悪さという点なら、黒形は恐らくこの学校でも随一な存在であるであろうことは、文芸部員なら誰もが知る。
「……まだだ」
 黒形は懐に手を伸ばし、素早く何かを抜き取った。
 ──二本の紙刀。それぞれ「怪刀村雨」と「奇刀菊一文字」と名付けられている。ちなみに、この二本が日の目を見るのはこれが初めてである。
 そして、それぞれを両手に据えて持つ。いわゆる二刀流である。
 姫翠はそれを見て、肩を落とした。
「えー……ずるーい」
 ずるいも何も、黒形の中では負けた方が負けという等式が存在するため、そんな言葉で錯乱しようなど荒唐無稽の愚痴に過ぎないのだ。

 黒形が姫翠のことを知ったのは、黒傘の乱の起きた翌日である。
「なんだか昨日の騒ぎの時、木刀で暴れまわってた人が居たみたいですよぉ」
 空井(そらい)ちづるがそんなことを黒形に言ったのは、部活終了直後のことであった。昨日の騒ぎの影響で、多少恒例行事である入部審査が来週に延期された旨だけ伝えられると、部員一同ぞろぞろと帰っていく最中のことであった。
「木刀……?」
 黒形は左目を眇めた。ちづるはそんな黒形の変化に気づく素振りも見せずに頷いた。
「はい~。その人がそれで一薙ぎすれば、周囲のゴキブリが次々と地に還ったと聞いてますよ~☆」
「ほぅ……」
 それだけ交わされた後、その話題が再び上がることはなかった。ちづるも何気なく言っただけだったのだが。
 当然の様に、黒形はその人物と対峙することを決心し、最優先事項として念頭置いてしまったのだ。
 というわけで、黒形の仕事というか(忘れがちだが黒形は仮にでも文芸部員)創作が一向に進まなくなった。
 それを怪訝に思った部長の美野里(みのり)が相談(詰問と言っても差し支えない)に乗ってみたところ、自分によく似た奴がいると暴露。
 それに興味を持ってしまったお嬢様は、いろんな伝を伝って探してみたところ、らしき人物が居た……というのが先週の話である。
 黒形がその姿を確認したのは、先週の金曜日。一人で購買部周辺に居たのを確認した。
 何の飾り言葉も無く言ってしまえば、ただの少女に見える。周囲とは少し違った容貌を持っているようだが、黒形はそういった感情を幸いにも持ち合わせていなかった。
 ──奴がそうか……。
 黒形はストーカーよろしく壁に張り付いて彼女を観察した。
 隙の無い眼差し(はじめての購買部に緊張しているだけ)に、無駄の無い体躯(仮にでも山卒である)。右手の薬指に巻かれた包帯の様なもの(ただの突き指である)。
 黒形は確信した。
 外見はのんびりしているが、実はとんでもなく鋭い牙をその毛皮の下に仕舞い込んでいる獰猛な肉食獣である、と。

 あからさまに姫翠が不利になった。何分、彼女はこんな決闘に発展するとは全く予想していなかったのだ。えくすかりばーが常用品だったのが幸いだったのだ。
 さっきからの連撃が更に加速した。一発一発の重みは少なくなったが、間隔が更に狭くなったので、もはや弾いている余裕など無い。ひたすら受け流すのみである。
 更に、こちらの疲労を狙ってか、時折鉄槌を仕掛けてくるようになった。二本の刀を平行に垂直に同時に叩きつける荒技である。向こうは紙だというのに、真剣なのではないかと錯覚させられるほど重みがある。
 姫翠は上手くえくすかりばーでその衝撃を受け流すと、一歩後退する。そして屋上の床を蹴って胴への強打を試みるものの、相手は二刀流、全く暇が無い。あっさりと受け流される。
 だが姫翠は速度を落とさず、そのまま黒形の後ろに回りこむ。斬撃。
 黒形はぱっと振り向きそれを防ぐ。そして再び連続攻撃の体勢に入る。
 先ほどからこれの繰り返しである。だが、戦況は大きく変わりつつある。両者とも疲労が蓄積してきたのである。
「柳瀬……」
 それを感じ取った黒形は、口を開いた。かといって、攻撃にムラができるわけでもない。
「次の一撃で勝負をきめる。このままだと埒があかん」
「ん……うん、了解」
 姫翠は黒形の菊一文字を流すと、一歩後退する。黒形も同様である。
 一定の距離をおいて、二人は睨み合う。隙という隙が見当たらず、蚊一匹入り込む余裕も存在しない。痺れを切らした方が負け。さながら刹那の見斬りである。
 黒形は困惑した。相手に全く隙が見当たらない。あれだけの長期戦で、更にこちらは二刀流で、受け流すのにも二倍の体力を使い、こちらよりも不利なはずなのに、全くそんな気が感じられない。
 久しぶりに戦慄というものを感じた。もはや、対等以上なのかもしれない。
 黒形はきつく村雨を握り締めると、最後の斬撃を加えんと地面を一蹴しようとした──刹那。
 後頭部に衝撃が走った。それは知るものぞ知る衝撃だったが、黒形には恐らく一生縁の無い衝撃であったであろう。姫翠はそれを呆然として眺めていた。
「何やってんのクロたん。もうあんたの負けでしょ」
 黒形の背後を取り、正宗で彼の頭を殴ったのは、他ならぬ文芸部部長州崎美野里その人であった。
 黒形はさっと振り返り、抗議の声を上げる。
「な、何を言うっ!我に武器はまだ残っていた!それならば、まだ負けではないはずっ」
 一応彼なりの敬語である。
 だが美野里は表情を全く変えない。
「普通一回弾かれたら負けなんじゃないの?そんな仕込み武器、しかも二刀流なんていくらなんでも卑怯過ぎない?」
「な……み、観ていたのか……部長殿」
 黒形は左目を大きく見開き、狼狽の色を露にした。
「うん、スライムに聞いてねぇ。どーにも怪しいと思ったからね、クロたんが休むなんておかしいと思ったわよ」
 美野里はそこまで言ってから、ぐっと顔を黒形に近づけた。
「それにしても……もっと他の方法は無かったの?」
「他の方法……? 我はこれが最善且つ最短単純だと考えたが……」
「何言ってんのよ。いきなり背後から襲うなんて非常識にも程があるでしょ」
「一応声は掛けた」
「でも前ぶれも無くいきなり斬りかかるなんて、相手が普通の子だったらどうするつもりだったのよ。泣いちゃってかも知れないのよ?」
「普通だと思っていたら、申し込んだりしない」
 ちなみに、姫翠は唐突な第三者の介入に、何がなんだか分からずに佇んでいる。そもそも、今まで闘っていた相手が誰なのかも知らなかったのである。
 やがて美野里は溜息をついた。
「ようやくクロたんが目覚めてくれたと思ったのになぁ……今度あたしが教えてあげようか?」
「な、何の話だ。我が何に目覚めたと?何を教えるというのだ?」
 美野里の意味深発言に、黒形はまたも狼狽する。黒形も美野里は対等な会話を苦手とするタイプらしい。
 お分かりだと思うが、美野里も一つ勘違いしている。黒形が姫翠の事を美野里に尋ねた頃から、既にこの勘違いは根を張り始めていたのだが。
 黒形が姫翠に気を持っていると勘違いしたのだ。というか、最初からこれが決闘であるということを知っていたのは、志奈くらいであろう。文芸部員は皆その勘違いが浸透してしまっている。
 というわけで、我が部員の恋の顛末を知ろうと、美野里が隠れて見守っていたら……あの始末である。最初は黒形の告白形式だと思って傍観していたが、やがて何かずれていると思い始めた。
 そして……今に至る。
「そんじゃ、迷惑掛けたわね。この子はあたしの方できっちりと言っておくから。ごめんね」
「え……あ……はぁ……」
 いきなり話題を振られて更に困惑する姫翠。
「さぁ行きましょ、お話することがたくさんあるからねー」
「ま、待て。何か勘違いをしてはいないか?」
「勘違いしてるのはクロたんの方よっ!女の子を何だと思ってるの?」
「な、な…………」
 他愛の無い会話を交わしながら去っていく二人。姫翠はそんな二人を見ながら切と思う。
(……仲が良いなぁ……)
 単純な乙女心は浄化されることなく。太陽はそんな彼女を哀れむかのように、橙を深めていったのであった。



いかがだったでしょうか……これを読んでいる人は少ないと思いますが……。
以後、短編に関しては、文芸部員が活躍する機会が増えると思われます。というか、ほぼ文芸部員ですね。彼ら、殉職しちゃいましたから。勝手に。
さて、今回は戦闘モノです。剣と剣との交じり合いを、勝手な考察で仕上げました。
始まりやオチはその場のノリです。やりたかったのは、戦闘描写だけでしたから。そちらの方ができていればと思います。
しかし、ちょっと乱暴でしたね。姫様苛められっぱなしですね……。
ちょいと罠を張ろうかと思いましたが、思いつかなかったので伏線は一切ばら撒かず。強いて言えば、利き手でしょうか……?
二刀流クロたんを活かそうと思いましたが、どうにも上手くいかず。結局、上には逆らえないタイプな人になってしまいました。んーまだまだだなぁ。
「なんでこんな技術高いの?」「なんで紙で木刀と対等に闘えるの?」なんて野暮なことは考えないように。あくまでフィクションですから。
ちなみに、和紙と蒟蒻糊のセットは、第二次世界大戦の時にどっかの研究員みたいな人が、和紙と蒟蒻糊で気球を作ってそれで爆撃する試みの時に使われたらしいです。意外と成功していたらしいですが、和紙を製造しているところに爆撃されて、終わったらしいです。因果応報、です。
えぇ、この短編を読み終えたということは、本編と前回の短編をお読みになった方と思われます。読んでくれてる方がいると思うと、とっても嬉しいです。書いてる本人も推敲するのが嫌になりますから。
えぇ、こんな幼稚野郎をこれからもドウゾよろしくおねがいします~

⇒to be countinued
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/11/24(月) 23:20:26|
  2. 明日は明日で暴風雨
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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プロフィール

可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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