弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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明日は明日で暴風雨 第二十一話 不可解連鎖

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 考えてみたが、いまいち分からんな。あの姫翠なら、笑顔でさらりと告白だの吐露だのとできるような気がするんだが。逆か、むしろ抱え込むタイプなのか、あれはあれで。全く、誄羅の奴もさっさと気づいてやれってんだ。
 とはいえ、俺があの二人の立場に立たされたとしたら、どうするんかね。これは想像であるゆえん、絶対に想像の域を逸脱しないのであるが、はっきり言って微妙だな。運命を共にした幼馴染だ。そして、終着が今。見事なくらい逆境を乗り越えて、幸福を掴んだ。その苦労は労いきれんよ。二人もあれで満足しているようだ。
 そんな奴らの心境と同化してみる、なんて不可能だろうな。そこまで精神構造は単純ではなさそうだ。特に姫翠。あの監禁時の動揺は本当に閉所恐怖症だったんかね。いや、分かる。幼少時の記憶というのは、すぐにトラウマになりがちだ。六年前、美里が飛び出していったときの精神ショックは大きかった。あの日の母親との二人の夕食は今でも忘れられん。──カップラーメンだ。舌を火傷した。三日間治癒に要したな。
 とやまぁ、今のあの二人のがあの位置に立つまで、紆余曲折の一言では語り尽くせぬ程のドラマと経験と出来事があったことは間違いない。姫翠の剣術が桁並外れているのも、誄羅の情報処理及び発信能力が俗を逸脱しているのも、その出来事の集大成なんだろう。
 ──そんな奴らの人生最大の恩師が出てくるわけだな。師匠と奴らは呼んでた。
 分かるのは、そいつがとんでもない暇人だったことと、慈悲の心が宗教者に匹敵することである。普通、何気もなしにぶらりと山にやってきて、そこで見つけた野生児をそのまま即席で庇護の許に入れるとかいうことができるんだぞ? しかも最終的に奴らに平穏で当たり前の生活を提供したのはその師匠だ。死ぬまでに会っておきたい奴だ。
 俺が姫翠だったら、そいつに惚れてても良かったと思う。いや、相当のオジサンだったら流石にアレだがな。……というか、そのステータスからしてみるに、壮年親父なのは間違いないな。
 ん、親父か。また妙なこと思い出した。俺は一度もお目に掛かったことが無い、本当に居るかどうか分からない、放浪癖の種を眷族の中で最も多く所有している男。生きているかどうかも分からん。母親が去年見つかったようなことを仄めかして出て行ったが──。
 放浪癖といえば、美里もどうして今ごろになって帰ってきたんだ。中途半端な時期じゃないか? おかげでフリーターじゃないか。まぁ、あいつは満足しているようだが。
 しかも、行っていた場所を明かそうとしない。これは何か掟で縛られてたりするのか? ……まぁ、別に今居るんだから良いんだけどな。
 そういや、今あいつ仕事泊り込みで家に居ないのか。
 そこで思考がストップした。現実に連れ戻される。全く……どうして俺の周囲はこうも湿っぽい話題が蔓延してるんだろうな。俺の趣味の無さの因果か。生きて帰れたら、将棋でもチェスでもモノポリーでも始めてみるか。
 椅子──パイプ椅子か何かに座らされて、手と足に猿ぐつわで縛られて固定されている。そんでもって、アイマスクに口には普通のマスク。マスクには薬品か何かが染み込ませてあるのか、妙に臭くて頭が痛い。嘔吐と眩暈が酷い。目が醒めたら、既にこの状態だった。この年齢になって、誘拐されるとは……夢にも思わなかった。──普通に恥ずかしい。この事実が校内に蔓延るようだったら、切腹を望むかも知れない。
 アイマスクを被されているから、周囲の状態が把握できない。だが、何人か男が居るのは分かる。
「──警察に通報は入ってない筈だ。漏れる前に身代金をさっさと回収すんぞ」
「……誘拐なんて聞いてませんよ。これがばれたら皆ムショ行きですよ?」
「しかも、漏れる前も何も、身代要求の時に普通にバレますよ? それにこっちには脅す要素が無いじゃないですか」
「確かにそうだな……」
 ──口を挟むようで悪いんだが、じゃあなんで俺はここに居るんだ?
 しかしどうやらこいつら、俺がまだ気絶中だと思ってるようだ。アイマスク様様だな。このまま巧く隙を衝けば逃げられるかもしれん。
「まあいい。最悪こいつは殺っちまっても構わんかんな。仮にでもこいつは姫にまとわりつく虫けらなんだ。居なくなった方が溜飲が下りるだろう」
 酷い謂われ様だな。そんな事言ったら、うちの学校の奴らは全員虫けらなんだろうな……なんて口論に発展させるつもりはないさ。マスクの所為か、いちいち反応するのが面倒だ。
「それじゃ、お前、このメモ通り電話して来い」
「了解っす」
 なんて短絡的な。遠ざかっていく足音が聞こえる。
「そんじゃ酌すっか」
「──何言ってるんですか。そんな状況じゃないでしょう」
「なぁに。どうせすぐに分かりはしねえよ。一回目の電話で全部言っちまえば良いんだ。何度も電話するから逆探されんだ。そんでもって、明日に日時を指定すれば、さしたこたぁねえさ」
「そういう問題でないと思うんすけどねぇ……」
「ふん、乗り気でないならいい。そんじゃ、作戦でも練るとするか」
「はいっす」
 そして、二人分の足音。
 しかし、なんだ今の会話は。──さっき電話させてなかったか? それなのに今から作戦立てんのか? てか何処に身代要求するんだ? なんだあいつら……俺が覚醒してる前提で混乱させる為に話してたのか? どっちにしろ意味が分からん。
 とりあえず、人の気配が消えたので、逃走を試みようと手首を動かしてみる。結構キツク縛られて血が止まっているようで、手の感覚が無い。これは絶望的か──と、落胆しかけたら、手首を縛ってる縄がギチギチいい始めた。……?
 本気で力を入れてる。手首に縄が食い込み悲鳴を上げてくる。正に激痛ってもんだ。ついでに、縄の方も悲鳴を上げて──切れた。途端に手の戒めが解けて自由になる。
 切れ目でも入っていたか。──本当に分からんな、あいつら。なんなんだ?本当に。
 とりあえず、アイマスクを外した。今居る場所は、中学校の放送室の様な小部屋だ。随分と廃れている。部屋の角に一般的なデスク。上に書類だのが色々とぶちまけてある。そして、ロッカーが六つほど。そのほか身だしなみを整えるための鏡だの諸連絡を伝えるための掲示板だの載せるものが無いパソコン台などと言ったものが諸々。工場の管理室みたいなところか?
 と、そんな悠長に観察している暇は無い。異臭のするマスクを外し、急いで脚の縄を外そうとするが──固い。なんだ、これ。固すぎだろ。いや、え? いや、脚をこの固さで縛るなら、手もこれくらいにしろってんだ。固すぎる。背中が丸まって痛い。疲れる。
 外れない。固結びを三乗近くやられているらしく、うんともすんともブチとも言わん。小部屋を照らす蛍光灯が虚しく点滅する。相当古いらしいな……ここ。
 どうする。まさか逆立ちして──無理だな。
 部屋に窓は無い。というわけで、そっちからの脱出は不可能。左手にある開き戸から堂々と出るほか無さそうだ。
 じっとしてても始まらないので、とりあえず立ち上がってみた。一本足と化した両足で跳ねて机に手をついく。ハサミか何かあれば──と思ったが、書類がほとんどで文房具がほとんど見当たらない。
 次にロッカーまで跳ねていって、一つ一つ開けていく。だが、作業服とか、そういう類のものしか入っていなかった。
 んー……もしかして図られたか? もしこの状況であいつらが帰ってきたら、どうなるか分かったもんじゃない。殺しても構わないとか言ってたしな──楽観は出来ん。
 何かないかと首を回して模索する。まだ諦めるのには早すぎるってもんだぜ。俺にはまだ三十年以上時間が残ってんだ。こんなところで死んで堪るかっ。
 と、そこであるものに目が留まる。鏡──か。
 ──最終的な結論。賭けだ。ちょいと罰当たりだが、……そんでもって、危険だが、試してみる価値はある。
 俺は体をよじって、パイプ椅子を持ち上げた。折畳式の椅子だから、そこまで重くは無い。
 でも、投げればそこそこ痛いんだぜ。
 俺はそのまま椅子を鏡に向けて投げた。丁度角の部分が炸裂して、鏡が派手な音を上げて昇天した。そして、お約束の通り破片が散乱した。
 予想外の大音量に慄きつつも、俺はしゃがんで鏡の破片を選別し始める。大きめで、なるべく鋭いやつな。
 適当な一つを持つと、脚を縛り付けている縄にあて、切断にかかる。お、意外といい感じだ。
 固く結ばれてたから、少し手間取ったし犠牲も多かったがなんとか切断に成功した。二分と鏡の欠片三つほどが犠牲だ。
 とやまぁ、解放に成功したから、さっさととんずらさせてもらうとするか。
 急いで立ち上がると、扉を開く。あの大音量を聞かれてないか、という不安があるが、まぁそのときはその時だ。
 半開きのドアから顔を出すと、左右に廊下が伸びていた。結構本格的な工場っぽい。まぁ、あいつらが使ってるんだろうから、廃業したところなんだろうな。
 廊下の突き当たりにある窓が明るいから、多分一晩をここで明かしたんだろう。……そういや、姫翠はどうしたんだろうな。独りで家に帰って……って鍵がねえのか。そんじゃ本家に帰ったのか。苦労かけたな。
 とりあえず、利き手の右に進ませてもらうとする。
 左側に「関係者以外立ち入り禁止」と、マスコットキャラクター的な奴が両掌をこちらに突きつけている札がついたドアが目にとまった。いや、目にとまった……というか、耳か?
 なんか、このドアの向こうから喧騒が聞こえる。……なんだどうした?
 と、向こうからドアに近づいてくる足音が聞こえた。マズイ、こっちに来る……。
 俺は脊髄反射で、その開き戸のすぐ右の壁に背中を張り付かせた。刹那、開き戸が廊下側に思いっきり開いた。そして、──何か見覚えのある中年男が、俺が元居た部屋に向かって駆け抜けていった。丁度、開いた扉板の死角になって、あいつからは俺の姿が見えなかったらしい。──危なかった。
 ドアは不用心に開きっぱなしである。どっちみち、ここに居てもあいつに見つかるだけだから、このドアから抜けさせてもらうとしよう。あいつが通れるなら、俺も関係者だ。
 そさくさ開いた扉板を回り込んで、扉を抜ける──と、思ったんだが。
「ぐぁっ!」
 走ってきた誰かと正面衝突した。あちらもあちらで相当な勢いで走ってきたらしく、両者とも見事に尻餅を搗く。そんでもって、俺は廊下の壁に背中をびたんとぶつける。
「いってぇ……」
擬音のしょぼさの割には、相当痛いんだが。床に手をつき睨みながら、呻く。
「いたた……」
 相手も相手で相当痛そう──ん?この声どこかで……。
 ばっと顔を上げると、ここでは絶対に見ないと思っていた、見慣れた顔が。
「柳瀬……」
「あ、こ、近藤君っ!」
 姫翠だ。手をついて、潤んだ目で俺を見た。何故か学校の制服姿。片手には例の木刀えくすかりばーがある。
 ──まさかあの喧騒はこいつの……。
「ご、ごめん、あいつ捕まえなきゃっ!」
 と、俺に何を言わせる猶予も与えずに、姫翠は素早く立ち上がると、床を一蹴、中年男を追いかけていった。
 俺が茫然と尻餅をついたまま、姫翠の背中を見つめていると、俺が監禁されていた部屋から、捕らえておいたネズミが居なくなってしまった猫の様な、困惑した顔をした中年男が現れた。そして、姫翠を見て、顔を真っ青にした。俺にも分かるんだ、きっと姫翠は大変なことをしでかしてたんだろうな。
 中年男はすぐに踵を返すと、俺が居るのと反対方向に逃げていった。姫翠は何かを喚きながら追いかけている。──なんかアクション映画かなんか見たか?あいつは。
 そいつらの姿が見えなくなってから、俺はやれやれどっこいと立ち上がった。なんかあいつの顔見たら気が抜けた。
 無人の扉を抜けると、拓けた空間が目に入ってきた。工場……か、倉庫といっても差し支えない……いや、工場の機具を全部どっぱらった様な感じだ。妙に閑散としている。倉庫だな、これは。倉庫もどきだ。
 そこに、打ち上げられた魚みたいに、男たちが昏倒していた。──いや、打ち上げられたってのはな、多分これはロケットか何かだろうな、これ。白目剥いてる奴居るし。
「いやぁ、これは、無事でしたか」
 唖然とする俺に、これまた懐かしい声が掛かった。誄羅だった。木の筒の様な物を両手で抱えて、肩に担いでいる。なんだあれ……。
「無事も何も……お前……何してんだ?」
 全く話が見えないんだが。目が醒めて脱出してきたと思ったら、必死の形相の中年男と少女の追いかけっこをリアルに目撃して、その後に男(チンピラ属性)が竜巻が湖を通過した後みたいに散乱し、そこに妙なもんを担いでこいつが現れるんだぜ? 本当に意味が分からん。準を追って論理的且つ簡潔に四百時詰め原稿用紙三枚以内に纏めて説明してくれ。
「何をとは。貴方を助けに着たんですよ」
 そういうこいつも制服だ。こいつら、まさか登校ついでに助けに来た訳じゃあるまい……?
「貴方も制服ですよ。おあいこです」
「あっそ……」
 俺のは関係ないだろうが。寧ろ不可抗力だ。昨日から着替えてないんだぞ。
 俺は一つ溜息をついて、地面に散らばっている男たちを一瞥した。
「……んで、こいつらは何なんだ?」
「いえ──姫様が全部やってしまいましてね」
「あいつが一人で?」
「僕はそういう類のものに疎いものでして。文官系です」
「……」
 いや、疎くなくてもこの量は異常だ。変だ。おかしい。悶絶だぞ? この顔は。え? 仮にでも大の男だぞ?
「アドバイスとして、男を相手にするときは、股を狙うと良い、と助言したら、この有様ですよ。──猪を一撃で気絶させるだけの姫様の剣術を嘗めてもらっては困ります」
 ──駄目だ、突込みどころが多すぎる。どれを突っ込んでいいんだか。
「あぁー……余計なことを吹き込むのは止めろ」
「そうですね。僕もこれを見て後悔しました」
 そうだ、極端なんだよな、あいつは。まぁ、あの中年男を狩れたら、満足するだろうな。
「──しかし、姫様は何故だか激しく憤慨していましたね」
「憤慨?」
「怒ってました。朝からずっと表情が違いましたから。久しぶりですよ、あんな暴走する姫様を見たのは」
 散乱する男たちを見て、誄羅は肩を竦めた。
「さて……そろそろでしょう。あれをとっちめてる頃でしょうか」
「──おう」
 そう言って俺達二人は歩き始めた。行き先は、姫翠の行った先である。何処いったんだか知らんが。
「しかし、なんでここが分かったんだ?」
 先ほど居たばかりの廊下に差し掛かり、俺はふと思いついて訊ねてみた。
「──いろいろあったんですよ」
 すると、誄羅は杞憂な顔をするだけで要点を喋ろうとはしなかった。まぁ、別に喋りたくないようなダーティーなことをしていたのなら、俺は無理に問うたりはしないが。
「しかし、まぁ、貴方もよく一人で脱出できたものですね」
 誄羅はちらりと俺を横目でみやりながら言った。俺は溜息をつく。
「やれやれ……鏡も壊しちまったし、あれ弁償すんのかなぁ……」
「──ふむ、そちらも結構汚い手を使ったみたいですね」
 その他人事のような言い方に、俺は眉を顰めた。
「……やっぱりお前も汚い手を使ったのか」
「さぁ。たまたま通りかかっただけですよ」
「嘘付け。ずっとこの辺に住んでる俺だって、こんな工場存在も知らなかったぞ」
「ほう。では、その偶然を覆す証拠がありますか?」
「……お前、少しひねくれ過ぎだ」
 それだから、姫翠の気持ちにも気づいてやれねえんじゃねえか。
 誄羅は苦笑して、今度は俺の横顔を直視してきた。
「貴方も嘘付きなさんな。存在を知らないのに、どうしてここが工場だと分かったんですか?」
「ん……?」
 ……そういえば、そうだな。なんで俺はここが工場だって分かったんだ? あの部屋の内装をぱっと見ただけでも、工場の管理室じゃないか、と思えたな。この壁を隔てた空間も、パッと見倉庫にしか見えない。
 なのに、俺はどうしてここが工場だと分かったんだ?
「やれやれ……姫様もあの男を殺さぬように自制をかけてくれると良いんですが……」
 そんな誄羅の呟きは、思考に没頭する俺の耳に入らなかった。

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  1. 2009/01/03(土) 21:58:26|
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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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