弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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明日は明日で暴風雨 エピローグ

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続きからどうぞ
↓  ↓  ↓

 ──実のところ、まだ解決していない事件がまだあった。俺が誘拐されたのとはまた別な、親父が無関係だと証言した、そもそもの原因となりつつあるあの事件。
 結局のところ、俺の周囲に起こった事件はほとんどが、あの──とはいっても、一人との面識はないが、三人の狂言だったわけだが、それとはまた別に、彼らが題材として選んだ現在進行形の事件──ストーカー恐喝事件。
 この事件の存在が、俺達の心理に上手く作用し、彼らの思惑通りの展開になっていったわけだが、この事件は未だ発生している。解決したのは、俺の身の上問題だけなのだ。
 親父は、調査中とか言っていた。親父も親父なりに興味を持っているらしい。
 その、チンピラたちの保護者のようなポジションを利用して、暴力団だの暴走族だの、平穏な生活を望む俺には絶縁を保ちたいような場所に赴いて、訊き込みを行ってみたが、全く心当たりはなし、とのことだった。
 恐喝、ということもあって、警察の調査する優先順位は低い。更に、ストーカーが絡むと成ると、それは民事の管轄になるので、警察による解明は絶望的だ。
 といっても、今後も被害が増えていっても俺にできることは無い。あくまで傍観者という座席に固定される。
 ──ゆえん、俺はそれを心の片隅に放置しておくことしかできないのだ。


 放課後の図書室に俺は居た。部活終了が終わった後だから、日は大分傾いている。際どい角度で侵入してきた紅が本を明るく照らしていた。
 別にここに居るのには、特に理由は無い。考えもなしに赴いてきただけだ。
 同じだった。あの時見た風景と。初めて姫翠の告白を受けたあの時と。あの時の会話が反芻される。
 ──私のことを支えてくれる人──
 あれは遠まわしではあるが、『弱虫』な姫翠のあいつなりの告白だったのかもしれない。だが、それは別の意味として俺は享受してしまった。
 だが、後悔は無い。あいつの胸中を読めなかったことに、悔やみは無い。
 あの時の俺が馬鹿だったから、今がある。過去が駄目なら、今どうにかすればいい。開き直っているようにも思えるが、俺はこれで良いと思っている。
「ここに居ましたか」
 ふいに背後から声がした。俺は内心ひやりとしながら、振り向くと誄羅が立っていた。
「お前か。何しにきた」
「いえ、別に。暇潰しです。貴方は?」
「──俺も暇潰しだ」
 俺は自分の細長い影を見やりながら、答えた。何故か、こいつの顔を直視できない。
 誄羅は貸し出しカウンターの椅子に腰掛けて、近くの本を手に取った。放課後の図書室ほど過疎が酷い場所は無いが、誰かに見られたら確実にいい顔はされない行為である。
 俺はそんな誄羅を半眼で見ながら、寡黙を守った。
「──気にする必要はありませんよ」
 長い沈黙の後、誄羅が口を開いた。その目はどこか虚ろで、過去を思い出しているようだ。
「何をだ?」
「僕はあの災害の際、記憶を失いました。そして、それと同時に別の人格が発生したらしいです。その人格というのが、今の僕です。姫様曰く、全くの別人だそうで。姫様に疎遠な態度を取られた衝撃が今もトラウマです」
 誄羅は質問に答えずに、ただ淡々と独り言の様に語った。
「昔の僕と今の僕は違う。姫様は絶望して、僕の旧名を二度と使わないと僕の前で言いました。そして、それから、貴方のお姉さんがやってくる……。そして、新しい世界に放りだされた僕に、彼女は名前をくれました。新しい名前。姫翠が僕の旧名を教えてくれずに、僕を呼ぶのに難儀したために、です。それが、誄羅──」
 ずっと貯めていた息を全て出すような、嘆息。
「『誄』とは、しのびごとという意で、死者への弔いを現す字です。羅は網の掛け合わせの意です。あの災害で哀れにも亡くなってしまった人の哀しみの連なりが、新たな人格として僕を誕生させた……昔の僕がどんなやんちゃだったかは知りませんが、姫様はそちらの僕の方が好きだったようですが、今はどっちでも好きだそうです。少し複雑ですが、少し安堵しました」
 ──俺が驚いているのは、あの美里が適当にえり好みで並べたようなひらがなの羅列に、そこまで深い意味が込められていた、ということだ。まさか、あいつはそこまで考えて……?
「だからどうした?」
「所詮僕は姫様の中の僕ではない。だから、哀れにも敗退した僕に気遣う必要は無いということです」
「敗退ってお前……あれは陽動だったんじゃ……」
「さぁ、どうでしょうか」
 誄羅は肩を竦めて立ち上がった。本を置いて、図書室の出入り口へと歩き出す。
 そして、ふいに足を止めた。
「一つ、教えておきますね。何故、僕が貴方に敬語を使うのか」
「……あぁ、ずっと気になってた、教えてくれ」
「一つは、僕は年齢を鯖読んでいる。実際は明後日で十六になります」
「──ハッピーバースデイだ」
「後一つ、『姫』という字のつくり──『臣』という字ですが、『市』とも置き換えられます」
「──」
「僕は見た目通りの甲斐性無しですから、気づかなくても当然です」
 なるほどな、と俺は口の中で呟き、その後に言った。
「……だが、お前には、それが本当だとは分からないんだろ?」
「信じられませんよ。僕にあんな大層な血族が居るだなんて。だから、多少他人行儀になってしまうんです。執事というポジションに収まったのも、それが配慮されてるのかもしれません」
「──そうか」
「それでは」
 それだけ言い残すと、誄羅は図書室から出て行った。静寂が蔓延る室内には、再び俺だけが残る。
 この一ヶ月──、姫翠は俺の視界に入るために、どれだけ苦心していたのだろうか。理不尽な早とちりが恥とされる今の情勢で、俺は一体何をされたら、姫翠の本心に気づけただろうか。
 そうなると、誄羅のあの時、建前で言っていたあの文句。あながち他人事ではなかったのかもしれない。寧ろ、俺に対する戒めだったのでは、と今なら思える。
 そうなると、あいつはどれだけ先を見越してあの行動に出たのか。下手すれば、自己破滅にも陥る危険性がある行為を決行するのに、どれだけの勇気が要されたのか。それは見方によれば、姫翠のそれよりも強固なものが問われたのかもしれない。
 ──だが、俺は何もしていない。ただ弄ばれて、用意されていたゴールへと誘われただけだ。だから、素直に喜べないのだ。
 あいつが気にするな、と言ったのは、このことに関してだったのか? 俺の自己嫌悪に釘を刺したものだったのか。
 俺は苦笑を漏らした。そんな回りくどいやり方をせずとも、ストレートにいえばいいのに。
 かといって、そんなことでこの悔恨が晴れる筈も無い。それを痛感するたびに自分が恨めしくなる。
 ──過去がどうであろうと、今があるから今どうにかするしかない。それが正論なのか、逃げ台詞なのか、俺には判断しかねる。否といえば、開き直り、かといって肯定すれば、ただの言い訳。
 俺はどうすりゃ良いんだ。
「あ、こんなとこに居た」
 そんな時、再び背後で声があがった。顔を上げると、姫翠が顔を出して手を振っている。その明快な姿に、今抱いていた煩悩を一掃されそうになった。
「お前……なんでここにいるんだよ」
「レポートに手間取っちゃって、部活のほう行ってみたけど誰も居なかったから、ここかなぁって」
 とことこと俺に歩み寄ってきながら、そう言ってくる。
「部活行ったってお前……」
「大丈夫、誰も居なかったから」
 顔を顰める俺に、姫翠はあくまでけろっとして返してくる。
 やがて、俺の隣まで歩いてくると、立ち止まって窓の外を眺め始めた。そろそろ日が沈みそうだ。
「それじゃ、帰ろ?」
 その声に、姫翠の顔を見ると、いつもの明朗な笑顔で俺を見ていた。
 ──でも、こうして悩んでいられるのも、こいつがこうしてここに居るからだ。そうでなければ俺は、ずっと仏頂面で変化の無い毎日を過ごしていただろう。
 そうして考えれば、そんな逃げ文句なんてどうでもよくなる。次のコマでよくなっていればいいんだ。
「あぁ、帰るか」
 俺はそう心に留めて、そう言った。二分前まで悩んでいた俺が馬鹿らしくなってくる。
「あぁ……と、一つお願いがあるんだけど……」
 すると、姫翠はいきなり窄まって、もじもじとし始めた。こういう態度を取るのは、大概俺も気恥ずかしい思いをするのだが──。
「なんだ?」
「わ、私のこと、下の名前で呼んで?」
 妙にそう言う姫翠が可愛らしかったもんだから、俺は鼻から息を吹きだした。そういうところに疎い俺でも分かる、王道的なセリフだ。これをここまで縮こまって言うとは──。
 俺は苦笑いを浮かべないように、気取らないように言ってやった。
「明日からな」


⇒END


あとがき
──すみません、最終章UP遅くなりました……。ちょっと、眠かったもんで。
いかがだったでしょうか。プロット完全無視の暴風雨ならぬ暴走小説の完成度は……。
ぶっちゃけ、題名なんて適当です。ぶっちゃけすぎました。ごめんなさい。でも、かなり適当です。
でも、適当でもバカ売れはするんです。涼宮シリーズなんて、10秒の思いつきで決めたらしいですから……とはいうものの、突発的にそんな高尚なことを思いつくセンスの問題ですけどね……。
とやまぁ、無事に完結を見ることができました。今、あとがきを読んでいる皆さん、お疲れ様です。
さて、裏話タイムに入りますよ。嫌な人は……下の謝辞だけ見てくれればよし。
企画が持ち上がったのは、去年十月中旬……でしょうか。フルメタの宗介を見て、非常識な奴が書きたい!と発起して考えはじめたものです。
でも、戦争を経験させるわけにもいかず、かといって、理由なしの性格破綻もまずいかと思い、ここは早熟層においての常識からの乖離という一般的な処置をとり、ラブコメということで、二人の男女を作りました。誕生はこの二人が一番早いです。
次に、一人称ですが、これは伏線です……といっても信じてくれるでしょうか。
もともと、この小説に女性キャラが極端に少ないんですが(傘霧さんはサプライズ)、肉親である美里はいいとして、あくまで『友人』である姫翠さんに関しては、ずっと姫翠と呼び捨てでした。
──正に、文学の常識の裏を衝いた、伏線……とはいったものの、実はなんとでも言い訳が効くんですね。基本的に、近藤君はプライドが高い子ですから、そういう呼び方になるのは必然というものなのです。そうすると、伏線と考えてもよかったんですが……微妙ですね……ハハ……。
それと、親父さんに関してですが、彼は当初の予定では購買部のおっちゃんでした。その証拠に、十一章の冒頭に無理に出演させてます。
親父はただの悪役でしたが、紆余曲折の果てにあんなんになってしまいました。いわゆる、変態オヤジ。ドンマイ。後悔はしてない。
とやまぁ、近藤君は本当に何もしてませんでした。ただ、目の前のことに没頭して、その背後の存在に巧い具合に操られ、最終的にはお花畑に辿り付いたわけですが、そういうのってどうなんでしょうね……分かりかねます。私は作者であって、彼ではないので。分からんな、とはこのことです。
そして、実のところ、一人称で書き上げる長編は二本目なんですが、(結局役にたたなかった)プロットを基に書き上げた作品としては初作品となります。自分でもよくこんな汚いプロットでここまで来れたと痛感しております……次からは、プロットから本気でいこう……。

さて、今これを読んでいるということは、恐らく全て(文字数 150569字 原稿用紙ベタ換算 377枚)を読んでくれたということでしょう。実質、それは書くことよりもすごいことだと思います。
だって、こんなちっぽけなサイトに置いてある、文庫本二冊いきそうな量の小説を全て読んでしまうだなんて、暇人だなんて揶揄するなんて無粋にも程があります。尊敬に値します。
というわけで、ここで何人見ているか分からないけど──言わせてもらいます。

応援ありがとうございましたっ!

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  1. 2009/01/08(木) 22:30:06|
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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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