弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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Program 第三章

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弐「二十四時間テレビってさ。全員見る人何人居るんだろ。」
屍「んー?どうなんだろうな。」
弐「結構明言が多いから、見といて俺は損は無いと思うんだがな……。」
屍「……。」
弐「どうした。猫から車を貰ったような顔して。」
屍「どんな顔だよ。いや、お前が真面目に口火を切ることなんて一度も無かっただろ?だから、……そう愕然としてるんだ。」
弐「……あっそ。」

ProgramⅢ
 黒い空間にいた。
 四方八方を見渡しても続く闇。人間を絶望の淵に追い込むくらい暗く、澱みどこまでも続いていく闇。視界が利かない、恐怖の対象にしかならない闇は、人々の嫌われ者。誰もが光を慕った。彼らに平等に降り注ぐ光は、崇拝されて、人間にとっては神と同義といってもいいほどの存在だった。
 だが闇は光が存在する前からいた。人間は闇を恐れ、光を崇めた。闇は、所詮人間、いやそれ以外の動物たちにとってもいいと思える存在ではなかった。
 だから、誰も闇を利用しようとは思えなかった。闇を利用するものは異端として殺された。闇は悪魔。混乱を齎す、神の天敵。
 当時誰もが、魔物を闇が作り出していると信じ込んでいた。光が作ったわけでもなかったが、闇が作っていたわけでもなかった。光を悪用したものが作り出したものだったのだ。光を悪用したのは、人間たちが信仰していた神だった。その事実を知った人間たちは、他の人間たちにその事実を伝えようとした。もちろんそんなことを信じるものは居なかった。真実を信じたくなかった。神を信じたかった。彼らの信仰心と、闇に対する偏見が悲劇を繕う。
 人間は次々と魔物に殺されて、食われていった。魔物は神の気まぐれだった。だが神はその後始末をしようとしなかった。人間に対する制裁のつもりだったのか。それとも神は何かが言いたかったのか。
 このままではいけないと、考えた人間たちは闇に魂を売って、魔物たちを自分たちの住む土地に魔物を全て封じ込めた。だがやむをえず、文明ごと封じ込めることとなってしまった。
 人類は衰退した。でも、残った人々は残った技術を集めて再び世界を復興させた。神の気まぐれにも負けず。
 でも誰も知らない。闇が復興の根本的な助けになったことを。光に滅ぼされかけてもなお、光を崇める。
 光が存在するところには闇が存在する光に対抗できるのは闇のみ。それを知らずに人類は光を信じている。今も。500年経った今も。
 どこにいるのか分からなかった。暗い空間。記憶の様に知識が流れ込んでくる。体が冷たくなったり、熱くなったり安定しない。自分の体ではないようだ。腕や脚に違和感がある。苦しい。心臓辺りをとんでもない熱さが占領している。
 誰も助けてくれない。闇はそんな彼を嘲笑うかのように、渦巻いている。
『信用してくれなければ、信用されるように動けばいい。』
 脳に直接突き刺さるように言葉が流れ込んでくる。とんでもない不快感が全身を伝っていく。足掻いても何も変わらない。上も下も右も左も無いみたいに体がぐるぐる回る。
『我らは間違っていたのかもしれない。それならその過ちを救済によって償うのみ。それが我らを嫌った人間であっても。そうでなければ、我らは一生目の敵だ。』
 嘔吐が喉の辺りまでせりあがってくるものの、何も吐くことができない。口の中に広がる不快感にもがく。
『汝が……我ら闇の眷族に残された最後の望み。リゼルよ。』
 名前を呼ばれた彼は目をかっと見開いた。
 闇から開放されて、目の前に広がる光景に目を白黒させる。
 黒いローブに身を包んだ老人。それは見た目だけであって、顔がなくてよくわからない。外套を深く被っており、顔が無いのを上手く隠している。
『闇の苦しさがわかったか。それが人間が我らに与えた罰。戒めだ。助けたのにも関わらず、だ。だが、彼らからしてみれば我らは恐怖の対象。目の前の強きものにしか目を向けられない人間だから仕方がないのだ。……苦しかっただろう。もう大丈夫だ……。』
 リゼルは自分の手を見て、頭の中を駆け巡る思考を纏める。自分が何をしていたのか。自分は何を課せられたのか。自分は……何者なのか!? 
『汝は闇の眷族最後の生き残り。現代最後の……魔法の使い手である。』
 老人の手には黒い水晶があった。黒い光。人間の眼球は黒い光を認識する能力が無い。だから……前に見たときは紫に見えた。だが……今はきちんと黒く光っていると認識できる。
『……行って参ります。』
『達者でな。』
 リゼルは、両親の形見……闇の使者であった両親の形見の水晶を受け取った。

 雨が降っていた。突き刺すような冷たさに顔をしかめながら起き上がった。湿った土。周囲には瓦礫の山。リゼルはここがどこだか分からなかったが……数秒後にはここが城だったことを悟った。
 途端に記憶が雪崩の様に頭の中を駆け巡る。一八年間の軌跡。長くて記憶の量も半端ではない。知識の処理に脳が軋みをあげる。思わずリゼルは頭を抱えた。
 それが済んでから改めて周囲を見渡した。雨がじとじと降っている。空は灰色の空。刺すような雨の冷たさに、自分が裸なのに気づいて慌てて隠せるような衣服を探す。
 それから目を瞠った。そこには墓石があった。そこに刻まれていたものは少しショックなものだった。
『リゼル=クレイド 此処に眠る』
 そして、僧侶の服装の一式がしんみりと置いてあった。
 不意に涙が込み上げてきた。自分が死んだときに誰かしらには弔って欲しいと思っていたのだ。実現しないだろうと諦めていたが。
 しばらくそこで泣いた後、服を手に取った。濡れていたが関係ない。サイズはぴったりだった。最後に外套を羽織り、フードを深く被って顔を隠す。
 それから城下町跡を後にした。向かう先といったら、地理に疎いリゼルには行く先がそこしかなかったのだった。

 リゼルはそこにたどり着くと、目を瞠った。逃げ遅れた人々の白骨が転がっていて、血のような黒い染みがところどころについている。
 近くの小屋に入ると、老人の腐った死体があった。腐敗臭が酷く、蝿が飛び回っていたがさして気にならなかった。
 ここは道具屋だったらしい。剣や盾、金属で作られた鎧などが少々錆付いているものの残っている。引出しを開けると、黒い布が綺麗に畳まれていて、それを広げると黒い外套だった。彼女たちには申し訳ないが、個人的にはこちらの方が良かった。白い外套を備えつきの鞄に仕舞うと、小屋を出た。雨は上がっていたものの、灰色の空は消える気配がない。
 かつての兵士寮があったところにいってみると、兵士の死体が無造作につまれていた。ほとんどが腐っていて蝿の羽音が酷い。その近くに、何故か血がたまっている桶があった。おそらく誰かが飲もうとしたのだろう。その周囲には大量の血の痕があった。
 リゼルは何も考えていないのに、ふと服を脱ぐと、その血の桶に浸していった。黒い外套以外を。しばらくの間ぼぉっとそれを眺めていた。リゼルでもよくこんな長い時間、血が乾くまで見つめていられたと思った。
 血染めの服を手にとって着る。綺麗に血で染まったそれは見る分にはとても禍々しかった。それに黒い外套を羽織ると、もうどこからみても普通の人間ではない。
 それを終えたリゼルの脳に鋭い衝撃がはしる。
『それが闇の正装だ。あとは汝次第。期待してるぞ。』
 それが終わると、外套を深く被った。
 さっさと移動してクラウス達と合流したかった。
 北側の出口に足早にリゼルは向かっていた。一秒でも早く。会いたかったから。
 ふと、足を止めた。殺気がする。こんな敏感になっている自分にも驚いたが、この殺気のオーラの強さにも驚いた。
 振り向くと、狼に似ているが狼よりもかなり大きい獣がいた。四肢の先についている爪は血で赤く染まっており、目は黒く光っていた。
「……魔物だ。」
 初めての対面だったが、リゼルは大して驚かなかった。
 ものすごい殺気を立たせている魔物を真正面から見据えながら、リゼルは思い出す。あの老人が語った、魔法。そして、あの拷問おぼしき闇の中の長い時間。そこで得たものがあった。
 リゼルはぐっと拳を握る。その手のひらに熱が篭った。その熱が上がっていくような感覚はないものの、手の中で大きくなっていっていた。
 そして、その握った手を開きながら横に払った。
 刹那、魔物は頭から燃えて、すぐ灰となってしまった。
「火炎弾……っぽいやつか。」
 リゼルは自分の掌を見ながら呟いた。
 灰となった魔物から骨おぼしき物を見つけると、鞄に放り込んだ。近くに襲った人間から手に入れたであろう、鞄が転がっていた。中身をみると、いろいろな投擲道具が入っていた。これを媒体にしたら威力が上がるかもしれないと思ったリゼルはそれも鞄に放り込む。
 一通り作業を終えたリゼルは門の外を見据えた。道がまっすぐに続いている。
「…………長そうだな。」
 灰色の空が嘲るように、再び冷たい雫を落とし始めた。

 早朝、アリスは、出発の準備をしていた。
 半年前。城が崩れ始めた。訳も分からぬまま、皆が逃げる方向に向かったところ、泣いているクラウスを見つけた。それで全てを悟ってしまった。
 でもクラウスは必ず帰ってくると言っていた。アリスはそれを信じて今生きている。
 クラウスは、父親の安否の確認のために戦場へと向かっていった。アリスも追いたかったが、クラウスはアリスを置いていった。
 あのころは本当に絶望の最中にいた。少ししか一緒に居なかったが、大切なものを立てつづけに失った。死にたくなってしまった。
 半年前、魔物が世界に溢れた、と全世界に報告された。無数の魔物を吐き出した城下町は一日で壊滅。魔物たちもそれぞれ散っていった。アリスは泣きながら城下町を後にしたのだった。
 誰もが自分が生き残るのに必死で、混乱の真っ只中だった。アリスは必死で逃げた。メイド服に着替えていたのが幸いした。着慣れていない服ではどうも調子が狂う。
 一ヶ月ばかりして、魔物がそれぞれの住処に定着したころに、残った主要の街に法令が出された。魔物討伐できる人物。またはそれらをサポートできる人物。そういった協力できる人間たちがパーティと呼ばれる集団を組んで、魔物狩りに出かけるというものである。刃を向ける先が人間ではなくなり、このパーティを組んで旅に出るものが多くなった。
 非力な人たちは、町でそういった人たちのサポートができるように、酒場や宿屋などを経営し始める。
 それから五ヶ月。全世界の人口の半分が旅を、半分が町に滞在している状況になった。魔物の出現によって、世界が大きく変わったのだ。共通の敵ができた人類は、争うことの無意味さを悟り、互いに手を取り合って生きていくことになった。ある意味では良かったのかもしれない。でも、そんなことを言ってしまったら死んでしまった人に悪い。
「アリス。起きたか。」
「あ、はい!」
 威厳のある男の声が聞こえてきて、アリスは準備が済んだ荷物を持ち上げた。
「今日で多分次の町につけるだろう。二日ばかり休んでいくとしよう。その服もそろそろ洗濯したいだろう」
「分かりました!」
 この男は、アリスが絶望の淵にいて、死場を探していたとき、助けてくれた男だった。魔物に襲われたところを助けられて、死にたいと喚いた自分を一喝して、生きる意味を持たせてくれた恩人だった。
 四十を今年迎えた、かなりの長身の恰幅のいい男で、クリスといった。ごつごつとした体は見るものを圧倒する。クリスは騎士号などといった号はもっていなかったが、剣に関してはかなりの腕前を持っていたのだった。アリス自身も見習わなくてはと思うところもたくさんあった。
 あれから変わらず、メイド服を着ており定期的にこうして洗っている。これは、こちらの方が自分の能力を最大限発揮できるということもあったが、彼のことを忘れないようにするためもあった。城は崩れたものの、帝国はまだ残っているのだ。
「よし、行くか。」
「あ、待ってくださいー。」
 クリスは基本的に一匹狼だったらしく、アリスを助けたあとどこかの町においてこようとしたらしい。が、アリスの戦闘能力の高さをみて、パーティを組むことに決めたらしい。
「全く。こんな時代になっても金の勢力がなくならないから困ったもんだぜ。」
「確かにあまり変わってませんねー。価値が上がると思ったんですが、本当に変わってませんね。」
「まぁ高くなるよかマシだな。」
 そんな会話をしながら道を歩いていく。畑が一面に広がっており、魔物から畑を守るための警備兵が頻繁にうろうろしている。こういった職業も誕生したのだった。
 もう少しで町、というところで背後から悲鳴が上がった。
「出たみたいです。」
 アリスがそう言うと、クリスは黙って踵を返して駆け出す。アリスもそれに続く。
 特設したメイド服のポケットからジャックナイフを取り出し、手に持つ。これはけん制用で、実際にとどめを刺すのはクリスの仕事だ。このコンボが決まれば普通のガロなら倒せる。レンジャー資格をもっていたアリスにとって命中させるのは苦ではない。
 ガロというのは一番弱いが、一番数の多い魔物である。狼がそのまま凶暴化しただけといった感じなだけに、対処もしやすいのだ。それでも素人にとっては恐れる対象となる。
 アリスはガロの黒い姿を確認すると、その脇腹にジャックナイフを投げつけた。鮮血を散らし、ガロが身じろいだ。走っているガロにも命中させることができるから、とまっているのに当てるのは訳も無い。
 そのまま、クリスがクロガー鋼鉄で作られた剣を首の辺りに振り下ろした。鈍い音がした後に、ずる、と首がすべり落ちた。
 クリスは呆然としている警備兵を見ると、その外見に似合わぬ笑顔を見せた。アリスは落ちた首を回収する。最初のころは抵抗があったものの、今ではすっかり馴れている。その首をクリスの持っている袋に入れた。
「体はここに置いてくんで、煮て喰うなりしてください。」
「は、あ、ありがとうございました……。」
 ガロの肉は食べることができて、淡白な味がする。しかしよくこんなの食べたな、と感心してしまう。
 警備兵は嬉しそうにガロの体を担いでいった。
「さていくか……。腹が減った。」
「お持ちしましょうか?」
「いや。大丈夫だ。」
 クリスの担いでいる袋にはいくつもの首が入っていた。ガロのものが大半だが、鳥の姿をしたモルビルの首もあった。空中を飛び回っていたが、アリスがナイフで撃ち落したのである。
「やっぱりこれが一番ほっとする瞬間ですー。」
「そうだな……。まずは頭を処理するか。」
 旅する魔物討伐者の為にこういった施設がある。頭を売るのだ。ガロはたいした額にはならないが、たいした大きさではないし一応金がもらえるので捨てずに集めている。
「二千七百ジャックと二トールになります。」
「トールはいらない。とっておいてくれ。」
「ありがとうございます。」
 アリスは二千七百と聞いて、安堵した。これならしばらく金にはこまらない。
「モルビルがいい仕事したらしい。やっぱりアリスと一緒にいて正解だった。」
「そ、そういって貰えると嬉しいです……。」
 そろそろ二十歳になる年齢だが、まだまだ子供っぽいところが残っていたのでこういうときは頭を撫でて欲しかった。が、まぁこんなところで、クリスのような大男が自分を撫でている光景なんて下手したら通報されかねない。それにこのことをクリスに言ったことは無かった。
 一応クリスには、自分は恋人を探して旅していると言ってある。クリスに付いていって、もしも見つかったら二人で町に残って幸せに暮らし、クリスとは別れるということになっている。リゼルがなんと言うかだが、恐らく町に残る方を選ぶだろうと思う。
「宿も取ったし、少し歩いて夜は酒場で飲むか。」
「はいー。楽しみですー。」
 宿をさっそうと取り終えたクリスはそう言った
 酒場は情報が自然と集まるところと相場が決まっているため、探し人をするにはうってつけだ。ただリゼルには特徴は無いので、アリスの書いた似顔絵を見せることにしている。あまり上手いとは思わないが、クリスに見せたら目を瞠って、これなら誰に見せても恥ずかしくないと言ったので、こうやって行くところ行くところで見せているのだ。
 城を逃げるとき、クラウスが泣いていたのをみて、リゼルが死んだのかと思ってしまった。だが、クラウスによるとリゼルは死んでいない。必ず帰ってくる、と何度も言っていた。それを信じたのだった。だから今こうして生きていると信じて探している。
 市場にまず足を運んだ。商人に関しては数は減ってしまったものの、まだ世界にはたくさんいる。彼らも世界を旅する人間に含まれる。それに普通の魔物を討伐する人間でも他の町から何かを持ってくることはあるので、市場は前と変わらぬ繁栄ぶりである
「これは何ですかー?おいしそうな匂いがしますー。」
「これは巻貝だな。いろんな調理法があるが、俺は普通に焼いて食べるのが一番好きだ。」
「貝というんですか。世界は広いですねー。」
「喰ってみるか?」
「い、いいんですか?」
 クリスは屋台の店主に銅貨を渡すと、巻貝を一つ手に取り、鉄の棒で器用に中身を取り出した。半分ほど出した後で、串に刺して手渡される。中途半端なように見えるが、これが公式らしい。
「……不思議な感じですね。」
「そういうとこがいいんだ。」
 ふぅふぅと吹いて冷ましながら少しずつ食べていく。下手したらやみつきになってしまいそうである。
「どこかの商人でも見かけたら、少し親しくなっておく。そうすりゃ知らず知らずのうちに商人達との交流が深まって情報が集まりやすくなるんだ。」
 クリスはそう言った。アリスもそう簡単に見つかるとは思えないし、じっくりやるのならばそれでいいと思った。とにかく諦めなければいいのだ。
「まぁお前が挨拶すりゃあ、大体の奴とはすぐ親しくなれるだろうな。」
「そ、そんなこと無いですよ……。」
 宿に戻ると、部屋に戻らないでロビーで開いてる席に座って来訪者を待つ。情報もなしに見知らぬ町に向かって飛び出していっても、屍になって帰ってくるのが大半だ。たとえ、腕がたってもである。盗賊や山賊に襲われたりしたら、どんな剣豪だろうがひとたまりも無い。
「国の中でも中くらいの規模か。元々農村だったようだから食料の値段は悪くない。」
「助かりますねー。」
「高いところだと干し肉一切れで布と同じくらいとるところがあるからな。そういうところで買うよりも、安いところでまとめて買ったほうがいい。相場を確かめるのは商人でなくとも常識だ。」
 アリスは宿の主人が出してくれた、コーヒーを口に運んだ。ぬるかったが、それなりに美味しかった。
「コーヒーをこの町で飲めるとなると、大分商人達の活動が活発になったのでしょうか?」
「実をいうとそれはコーヒーじゃなくて魔物の体液なんだ。ドスとかいった奴だったかな。」
「そ、そんなのがいるんですか。」
「あぁ世界は広くなったよ。」
 アリスよりもずっと旅をしてきた経験が深いクリスはアリスよりも知識は深い。アリスが詰め込んできた知識はもう役に立たないといってもいいのだ。特に地理学は大分世界が魔物によって壊されてしまったので、町があるべきところが、凶暴な魔物の巣ということもあるのだ。城跡は、リゼルの墓を作った(そのときは諦めていた)とき以来行っていないが、あそこはかなり危険な地域らしい。発生地帯だから無理も無いが。
 しばらく当り障りの無い話をしていると、日が少しずつ暮れてきた。
「そろそろ行くか。」
「はいー。」
 旅人という身分なのでそこそこの宿にしか泊まれず、そのくらいだと話に割ってはいれるほどの商人はなかなかいないのだ。だから誰も入ってこないのは日常茶飯事なのである。
「今日は金を気にかけないで存分に飲めるぜ。」
「そうですねー。でもあんまり飲んで酔いつぶれると大変ですよー。」
「そんな悪酔いはしないさ。」
 そこそこの大きさの扉を開けると、中はそこそこ広い店内に半分ほどの客が居た。服装からしてほとんどが旅人のようだ。基本的に誰でも旅人になれるものの、素人がいきなり旅人になると大変なものがある。魔物に襲われても対処の仕方に困るし、行く先行く先で詐欺に会ったりするからだ。だから、素人で旅に出たいものは、旅人に付いていくなりするのだ。そうすればじっくりだが感覚で覚えていく。魔物の生態についてもなんとなく分かる。そういう人たちにとって、旅人と商人の集まる夜の酒場というのはうってつけの場所だった。
「時期が時期だから商人はやっぱいねえな。こういう時期を狙えばもっと高く売れると思うんだがな。まぁそんな甘くねえのか。」
「でしょうねー。私たちには無理がある時事知識と経験が必要ですからね。」
 空いている席に腰をおろす。全てが木でできた机と椅子は酒場ではどこでも同じだ。
「ビールをくれ。」
「かしこまりました。」
 注文をとっている娘にクリスはそう言った。ビールは製造者によって、味にばらつきがあるものの、少量の麦で大量に作る技術が誕生してしまったので破格となっている。
「私はリンゴの果汁でいいですー。」
「かしこまりました。」
 アリスは酒が飲めないので甘いものを頼む。控えているというよりは、とても弱いだけだ。少し飲んだだけでお星様が頭上で閃く。
「まぁ飲めないのは悪くないさ。体にいいもんじゃねえしな。」
 と、クリスは言うが、アリスはやっぱり悔しかったのだった。
 少し経つと、店の中は満席となった。周囲からいろいろな噂話が流れ込んでくる。
「相席いいかい。」
「あぁ」
 若い男の声がして、クリスの隣の席に若い旅人らしき男が座った。背中には大きな剣が刺さっている。おそらく騎士号を持っていた人だろう、とアリスは思った。あんな大きな剣もてるかどうか分からない。クリスは易々ともてるだろうが。
「噂には聞いていたがな、まさか本当にお目にかかれるとは思わなかった。」
 男は調子よくそう口火を切った。会話に溶け込むのに大分馴れを感じる。
「何の噂だ。」
「大剣を持った大男と、帝都のメイド服を着た二人組みのパーティがめちゃくちゃ強いとかいう噂を聞いてね。んなちぐはぐなパーティがあるかと思ってたら、本当にいるんだから世界ってのは分からないね。」
「ん、まぁ俺はともかく連れは目立つな。」
「これがやっぱり正装なので……。」
 男はウォッカを頼むと、机に肘をついた。
「ここで会えたのも何かの縁だな。俺はリョウってんだ。」
「クリスだ。」
「アリスと申しますー。」
「ほお。アリスというと、生まれは西かい?」
「分かりませんが、多分そうだと思いますー。」
「おっとこりゃ失礼なことを聞いた。」
 男は頭をがりがり掻いた。
 ビールと果汁が運ばれてきて、アリスはそれに口をつける。どこでも同じ甘酸っぱい味がする。
「しかしクリスさんもいい子を拾ったなぁ。」
「ああ。俺の何倍もいい味を出してる。」
「そ、そんなことないですよぉ……。」
「しかし、帝都に居たのに今ここに居るということはかなりの腕利きなのは間違いないね。」
「騎士号を持ってたらしいぞ。」
「そ、そんなたいしたことじゃないですー……」
「す、すげぇなそりゃ。噂にもなるほどのことはあるわな。」
「噂って何処で聞いたんだ?」
「えっと、この辺り一体の町では大体耳にするな。大男とメイドのパーティなんてあんたらぐらいだろうからな。クリスさんも騎士あたり持ってるのか?」
「俺は田舎生まれだから持って無い。」
「んええ。それでこんなドでかい大剣もってんのか。すごいなぁ……俺もパーティ組んでみようかなぁ。」
「お前の場合は入るより作った方がいいんじゃないか?剣を見るに相当の腕利きとみえるが。」
「と、とんでもない!俺より強いゴロツキなんて無数にいるよ。世界は広いからな。」
「リョウさんも騎士号か取ってらしたんですか?」
「んにゃ。俺は一個手前だったな。もう覚えてないが。」
「すごいですねー。でももっと強そうですよー。」
「そうでもないさ。この前ガロの群れに遭遇してさ……。」
「失礼。」
 今度は長身の男がアリスの隣に座った。恐らくレンジャー辺りだろうと思われる服装だ。
「こりゃ噂の主とメイドさんではないか。」
「そんな広がってるのか。」
 クリスが顔をしかめた。
「ガロの首を一発で刎ねる怪力を持つ男と、モルビルを一撃で仕留めるメイド服のパーティがいるって前の町で聞いてね。まさか居るとは思わなかったよ。」
「モルビル一撃!?そりゃすげぇわ。」
 男が苦笑いしながら言うと、リョウが食いついてきた。
「あいつの腿肉のから揚げうまいんだぞ。あれにはまって一回小遣いがすっからかんになっちまった。」
「それくらいあいつは捕縛が難しいんでさ。」
「なんだ……。それなら体もとってくりゃ良かったな。」
 男は、ロゼフと名乗った。元々レンジャーのプロ資格をもっていたらしい。それ故にいまもレンジャーとして活躍しているらしい。
「ところでこんな奴を知ってるかい?」
 適当な会話の割れ目で、クリスがアリスの似顔絵を差し出した。アリスは恥ずかしくなって顔をそれから逸らした。
「んんん……見ない顔だな。」
「僕も知らないな。」
「そうか。悪かったな。」
「ま、俺もそんな旅した時間は長くはねえから当然なんだけどな。」
 と、リョウは快活に笑った。
「お二人さんは次はどこに?」
 ロゼルがビールを口に運びながら言った。
「んん……次の待ち行ったら引き返すかな。」
「引き返すか……。どちらの方に?」
「帝都のほうかな。」
 アリスは胸が締め付けられそうになった。それは多分アリスへの配慮なのだろう。
「帝都の周辺じゃもっぱらの噂なんだけどな。ヤバイ奴がいるらしいぞ。」
 リョウが少し赤い顔で言った。
「ヤバイ?」
「あぁ。なんか黒いローブを深く被って顔がよく分からなくてな。その下に真っ赤な服を着てるんだとさ。」
「赤?」
 ロゼフが首をかしげた。
「赤の染料ってなんだったか?」
「血だろ。」
 クリスがさらりといった。アリスの体が思わず強張った。
「そう、血染めの服を着てるとんでもない奴が居るってな。」
「黒いローブに赤い服ね。そら確かにヤバイわ。」
「でも人間だから人間は襲わないだろう。」
「分からんよ。盗賊も一応人間だ。」
 リョウはウォッカを思いっきり飲み干して、席を立った。
「さて俺はそろそろここで。」
「んじゃ僕にここで。」
「あぁ。じゃあな。」
「あぁ。また。」
 簡素な挨拶を交えてロゼフとリョウは酒場から出て行った。
「黒いローブに血染めの服、といえば闇の眷族じゃないか。」
 クリスが口を開いた。
「闇の……けんぞくですか。」
「あぁ。知ってるだろう。帝都の城辺りに住んでいた魔法使いたちのことは。」
「はい。」
「そいつらは闇の眷族って呼ばれてたんだよ。んで、そいつらが魔物を作り出したとされている。それに対抗した光の眷族が、闇の眷族を残らず倒し、自分の身もろとも魔物を封印したと伝えられている。」
「はぁ……ってことは……。」
「闇の眷族復活か……。」
 クリスはやだやだといった感じで首を振ると、ビールを飲み干した。
「そろそろ帰るか。」

弐「俺は思うんだ。」
屍「ん。」
弐「こういう中世が舞台の物語の時計ってのはどんなのだろうと。時間の表示が無いのもあるし、なんか分かってるのもあるんだよな。」
屍「……。」
弐「んだよ。猫パンチくらった赤ん坊みたいな顔して。」
屍「泣きそうな顔じゃねぇかそれ……。いや。お前がこんな普通だから…野草でも喰ったんじゃねえかと。」
弐「俺はロバですか。」
屍「なろうと思えばなれるだろ?」
弐「なれるか!」

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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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