弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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保護及び対策課その参拾四~ラブコメ編~

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参拾四
「やだってば!降ろしてよ!」
「……許さねぇ。」
「ちょっと!ホントやだってばぁ……!助けてよー!」
「命乞いするなら自分のやったことを悔やむんだな。」
「わぁぁああっわあわわわあわ!!」

 私は長椅子の上で、嘆息した。オイルがぶちまけられていた床は綺麗に拭かれていて、ワックスで磨いたかの様にピカピカ光っている。いやな光りかただ。
 田代は、ウサギさんを担いで袋の中に入れようとしている。袋の入り口付近に、『解禁厳禁』とかかれた紙が垂れ下がっている。なんてバイオレンスな光景……。傍から見れば、田代はただの犯罪者。それが警視庁の中ってんだから現実ってのは分からない。
 私は自分の掌を見下ろした。なんというかじんわりとしていて湿っている。それに少し匂いがキツイ。何と吹き込まれたかは分からないが、相当急いできたらしい。汗でベッドリだった。
 ……単なるお節介で田代を呼んだのならば、あの袋から三週間は出さなくていいだろう。
「うぇぇぇええん……ごめんなさい……。」
 袋の中から、嗚咽交じりの必死の謝罪が聞こえてくる。田代は、靴についたミジンコを無視するくらいあっさりとそれを無視し、私に近づいてきた。
「……なぁに?」
「足どうしたんだよ。」
 どうしてそんな必死なんですか、と私が訊いたら釣り合いがとれるくらい微妙な質問。
「こけた。」
「こけたってお前な……。」
 予想通りの反応。というか、その反応に持っていっただけなんだけどね。田代の性格なら大体わかっている。性格はわかってるんだけど、行動が……ちょっと、ね。
 息を切らして、首筋に汗をあらん限り塗りつけている田代の様子を観察するために凝視する。
「自転車?」
「走り。」
 勘がいい。てか走りでここまで来たのはある意味では褒めるべきなのかも……。
「んで、なんで俺は此処に居るんだ。」
「ほんとなんで来たの?」
 まさか電話越しに催眠術を掛けられたわけではないだろう。まぁ保対連中の誰かがやってもおかしくは無いけど。
「メールでな……世紀末の大ピンチとか何とかいうのが来てな……。」
 私が思わず目を細めると、彼は更にキツく睨み返してきた。そういう意味じゃなくて哀れの意味だったんだけどな。
「とにかく。用がなければ俺は帰るぞ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」 
 本当に身を翻して帰ろうとする田代を慌てて呼び止める。
「んだよ。」
「怪我してる女の子がいるのに、なんでそのまま帰っちゃうのよ!」
「なんだホントに怪我してんのか。なんかのギャグかと思った。」
 私はむっとして、半眼でこっちを見てきた田代の眼球にありったけの憎悪をこめた視線をプレゼントしてやった。ありがたく受け取ってくれたみたい。
「何をしろと?」
 ……私は何を求めてたんだろう。単に田代の人間のモラルを求めるが末、自分の墓穴をショベルカーで掘るハメになってしまった。
「う……ん……。」
些細な質問に、答えを窮す私に追い討ちをかけるように、田代が呟いた。
「また抱っこか…………。」
 きちんとその言葉は私の鼓膜に届いていた。
「そう!抱っこして!」
「はぁ?」
 因数分解的のクエスチョンマークと、最大公約数的な怒りを込めて、田代の眼球に無理な力が加わる。思わず仰け反ってしまったが……ハンドルを握りなおす。ここで退いたら負けだ。
「うん。足怪我してて、歩けないから病院まで連れてってよ。」
「んでだよ。だったら飛んでいけばいいじゃねえか。」
「着地ができないの。」
「んなん予め呼んどけばいいじゃねえか。」
「誰を?」
「咲羅とか。先生も居るだろうが。」
「駄目だって。二人とも私支えられないもん。」
「そんな重いのかお前。」
 ぐっと言葉に窮す。理性に意識を乗っ取られて、思わず叫ぶ。
「そ、そんな重くないもん!」
「んじゃ行って証明してみろ。」
「わざわざ行かなくても証明できるから!」
 そう言って、私は両手を田代に向かって突き出した。仏頂面の極みを極めた田代の顔が壊れそうになる。
「連れてって。」
「……素直にいえ。」
 最初に素直に言ったじゃない!そんなこと言うなら田代の方が素直になんなさいよ!
 その発そうと思った言葉は、宇宙の彼方に二十四時間マラソンに出かけてしまったように、喉の奥に封じ込められた(!?)。
 私の体が、いつも飛んでるのと違うような浮力で、重力に捕らわれなくなって……。大きくぐらついた。
「きゃぁぁっ!」
「バ、馬鹿ヤロ!手をつかえ!」
 ば、馬鹿……。仕返しに、手ごろにあった胸に肘打ちを食らわせたら、小突かれた。……。
「……。」
「どうした。急に黙って。」
 田代が警視庁を出るときに訝しげに訊いて来た。
「ううん……なんでも……。」
「んだよ……。まぁ静かになったのならそれでいいけど。」
 夏が終わってもまだまだキツイ日差しの中を田代は歩き始めた。私はその腕の中にぽわーんとした気分で収まっている。……この動作不純は、ちょっとしたことでスイッチが入ってしまったようだ。
「田代。」
「何だよ。」
「汗臭い。」
「黙れ。」
 じっとりと濡れている。Tシャツを通して、体温によって熱を持った汗が私の制服に染み込んでくるようで、気持ち悪い。服の中の湿度が急激に上がって、蒸れる。おまけに汗臭い。
 でも、それらの要素が全部吸収されて、それが心臓を動かすエネルギーに変わったと言うか……動悸が収まらない。
 べ、別に田代にそんな、特殊な感情を抱いているわけじゃない。むしろそっちじゃなくて……私の立場。仮にも中学生の最高学年、義務教育最後の年を生きる私にとって、これは単なる屈辱でしかなかったのだ。
「な、泣くなよ。んな恥ずかしいか?」
「何であんたは大通り歩くのよ……?」
 じっとりと濡れている胸に顔を預けて、シャッターを切る音が聞こえてこないように、必死で祈っていた。

 結局休日はお流れ。足の怪我の治癒で全て使い切ってしまった。もったいない……。
 咲羅さんにみせたところ、
「二、三日で治せますから、治しますかー?」
 と、言った。私的には、体育も休めるし車での送迎が可能になるから、自然治癒の方が良いなーと思い始めていたけど、田代が間髪も入れずに、
「んじゃ治して。」
 とか言ったから、休日はずっと病室に閉じ込められてた。
 こっそり抜け出すこともできたけど、そんな事をしてもいくあてがないし、咲羅さんを困らせてしまうので、ずっと病室でおとなしくしていた。これがどれだけ辛かったことか……。
 精神的な疲れと、肉体的な疲れをとれたのは良かったけど、退屈すぎて気疲れしてしまった。だから、今日も結局売れなかったおでんの具みたいに、机にぐでんと突っ伏していた。日の光が布団の様に背中に覆いかぶさってくる。こうして因果な積み重ねによって、睡魔という無味無臭の怪物が、網膜の底から現れて、瞼との戦闘になる。瞼の通常攻撃。睡魔は攻撃をかわした。睡魔のカウンター。瞼に9999のダメージ。瞼は敗れ去った。睡魔の勝利。経験値ーーーー手に入れた。
 ぐぅ……。
 睡魔はレベルアップした。攻撃力が11上がった。防御力が12上がった。攻撃の威力が12上がった。守備力が11上がった。すばやさが二倍になった。心の大きさが二乗になった。運がグーンと上がった。足の臭さが無くなった。水虫を卒業した。顔のニキビを解消した。抜け毛を解消した。彼女ができた。成績がグーンと上がった。視力が
 zzzz……。

 軽やかな足取り。日が照らしつける、繁華街。その灰色のアスファルトの上を踊る影。人の話し声。車の起動音。クラクション。猫の鳴き声。
 その女は、一人の子供を手に連れて繁華街の中にある、デパートの中を歩いていた。
 流れるような束ねてある長髪、深くかぶった帽子。特徴的な女だった。
 そして、連れられている子供。中学生ほどの少年。だが、外見とは違う、目の輝き。全てのものに好奇心が向けられて、ことあるごとに、女の手を引っ張っては駆けていく。
「ねーねーママぁ!これ買って!」
 中学生の少年が、プラスチックのおもちゃをてにとってそう言った。女はくすくす笑いながら言う。
「いいわよ。その代わり」
「わかってるよ。」
 少年はそう言うと、きゃっきゃっと騒ぎながら、そのおもちゃをレジに持っていった。
 レジの店員は、怪訝そうな顔をしたが、女は気にせずに勘定を済ます。
 おもちゃを我が物にできた少年は、はしゃぎながら不器用なステップを踏んではしゃぎ始める。他の客の視線が一斉にそんな彼に降り注ぐ。彼はどこかに居るような、スポーツ少年の様な容姿をしている。だが……中身と外見の齟齬は、極を極めていた。
 買ったばかりのおもちゃで遊びながら、楽しそうに女のもとへと駆けていく。
「満足した?」
「うん!」
 女は手帳を取り出すと、今買ったおもちゃを記録した。
 一ヶ月前は、野球用品や携帯電話といった、いかにも中学生らしい物品ばかりだったが、半月まえまで戻ると、子供向けの携帯ゲーム機。一週間前にいたっては、子供だましの電子玩具。
 そして、今日買ったものは、文字の組み合わせを覚えるための玩具。
 女は少年を見下ろして笑みを浮かべた。面白そうに、文字の書かれたブロックを弄くる中学生の少年。一ヶ月で人間はここまで堕ちる。
「これから帰るの?」
「その前に寄らなきゃいけない場所があるの……。」
「ええーどこ?」
 少年は不満そうに口を尖らせた。手に持っている玩具で早く遊びたいのだろう。
「いいところ。」
「お医者さんじゃない?」
「そんなところよりもっといいところよ。」
 そうすると、少年の顔から翳が消えて、明快な輝きが取り戻される。ちょろいものだ……。
 タクシーを拾うと、少年に聞こえないように、運転手に行き先を告げる。
「戻咲墓地に……。」
 タクシーの車内には、エンジン音と少年が玩具で遊ぶ音だけが静かに響き渡っていた。

御託はもう終わりだ。こっからはシリアスで行くぞ。いくらなんでも停滞しすぎだw
ま、シリアスつっても、きちんと表題どおり行くけどな。一応流れは決まってるから。そんだけだ。
以上。                             記:弐

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  1. 2008/09/06(土) 21:09:33|
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プロフィール

可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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