弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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休暇

「雪」「レモン」「魅惑的な殺戮」を使って創作するんだ!ジャンルは「指定なし」だよ!頑張ってね!
三題噺のお題メーカーにまた依頼された。


僕が婚約者の家の和室にいた。ちゃぶ台を挟んで、こちらは僕一人、向かいに彼女とそのお父さんがいる。
手のひらがじっとりと汗で滲んでいて、声を出すのも忍びないほどの静寂が空間にはびこっていた。
彼女のお父さんが頷いた気がした。僕はそれを潮時の合図と受け取って、勝負に乗り出した。
「……娘さんを下さい」
思ったよりもあっさりと言えた。しかし、言葉は静閑へ吸い込まれるように消えていった。
彼女のお父さんと眼があった。僕は目を逸らしかけてしまったが、なんとか思いとどまった。何を意図しているのかさっぱり分からない目の色をしている。
やがて彼は、困ったように眉尻を下げて言った。僕は唾を飲み込んで、耳を開く。
「いや、いいんだけどさ……」
僕は決して心中でガッツポーズをとらなかった。分かっている、ここからが本番なんだ。
彼女のお父さんは続けて、
「こいつが良いっていうならな」
と、横目で彼女を見た。僕もそれに倣うように彼女に視線を向ける。
しかし、彼女はどちらの視線も受け入れずに、つんとあさっての方向に目を向けてしまった。
僕も彼女のお父さんと同様、困惑した。こんな馬鹿な話があるかと思うが、とにかくこうなってしまったのだ。別に、政略結婚の類では全くない、純粋な愛情からの結婚であるのには間違いない。昨日会って、速攻で婚約したというわけでもないし、僕が強硬に結婚を決定したわけでもない。
しかし、現状ではこうなってしまっている。僕は大いに溜息を吐きたいところであるが、今まで散々吐いてきたので、今は自重する。
「お前の言い分はなんなんだ」
彼女のお父さんは面倒くさそうに訊いた。
彼女は不機嫌そうな顔で僕を見て言う。
「プロポーズの言葉を覚えてる?」
「……うん」
「『君と白雪のような家庭を築きたい』って、言ったのよね」
「…………うん」
「白雪! 雪って言ったのよ、お父さん! これを見てみて!」
彼女は唐突に立ち上がると、縁側の障子を開け放って、外の景色を見せた。なるほど、カンカン照りの太陽が庭の緑を立派に映している。
「夏まっさかりじゃない! なんて季節感がないの! そんなセンスのない人と生活だなんて、不安にも程があるわ!」
僕は頭を抱えて、思い切りちゃぶ台に叩きつけたくなった。
「で、でも、OKしてくれたじゃん」
「あの時は雰囲気が雰囲気だったから、OKしたの!」
「えぇ、じゃあ、早朝にメールでそう言ったら、拒否したってわけかい」
「きょ、拒否まではいかないけど──、いや、した!」
「……。でも、了解してくれたんだよね。だけど、今は嫌だって言ってるし……。じゃあ、僕はどうすればいいのさ」
「……仕切りなおして、もっとまともな文句で告白してよ!」
「告白から仕切り直すの!」
「当たり前でしょ! あの時、私になんて言って告白したと思う! 『レモン一年分をもらうのと、君を好きになる、どっちか選べって言うなら、君の方が好きだ!』って言ったのよ!」
彼女のお父さんはすごく呆れた顔になって言った。
「お前、それもOKしちまったのか」
「え……、そ、そういう雰囲気だったから……」
当時の僕をボコボコにして、今すぐこの場で謝罪させたい。激しく謝罪させたい、頭を丸めさせたい。
彼女はまた向かいに戻って腰を降ろし、僕を改めて睨めつけると、
「っていうか、何でレモンなの! もっと他にものがあるでしょう!」
「いやあ、あの時梶井基次郎の『檸檬』を読んだばっかで……」
「影響されすぎでしょ! 告白相手が私で良かったね! 他の子だったら、即木っ端微塵だったから!」
僕は閉口してしまった。逆に言えば、君だったからそんな事を言ったのだけれど……。
彼女はちゃぶ台を平手で叩いて音を鳴らすと、ぐいと身を乗り出して僕に顔を少し近づけた。
「さぁ、今すぐ告白してよ!」
「……」
僕は喉元にナイフを突きつけられたような気分になったが、すぐさま思い直して冷静に頭を回し始めた。
別に飾る必要など無いだろう、素朴でも芯があれば、それで良いはず、彼女なら分かってくれる。
真正面から彼女の僕を見据える瞳を捉えて、告白した。
「ずっと前から、いつからか分からないけど……、君のことを考えているだけでなんだかやりきれない思いになる。きっと、そういうことなんだろうけど……、君のことが、好き」
しーん、と容赦の無い沈黙が落ちてきた。僕は激しくちゃぶ台の下に潜り込みたくなる。
「私も、好き」
肩の荷が音を立てて下りた気がして、僕はとてもほっとした。
でも、これが第一歩……。次はなんと言うか。
そんな風に逡巡していたら、彼女が何か言いたげに僕を見つめていた。
心臓が跳ねたような感覚を覚えた。なんだこれは、ひどく緊張する。真っ白な空間に僕と彼女しか居ないようだ。
ふいに、彼女が口を開いた。
「もし、あなたが……」
いつになく綺麗な声だった。僕は唾を呑む気さえ起こらなかった。
「私に、お父さんを殺せと言うのなら、喜んで殺します」
彼女のお父さんの顔が強張った。
彼女はそんな彼を全く気に留めずに、
「それほど、あなたのことが好きだから……、結婚してください」
首もとが熱くなった。水をかけたら一瞬で蒸発するんじゃないか、というくらい顔が火照ってきた。
「……僕からも、お願いします」
拍手が聞こえた。彼女のお父さんが、満面の笑みで手を叩いていた。
彼女を見やると、火がでそうな程真っ赤な顔を僕に向けていた。
「いつも、あんたばかりそういうこと言って……、ずるい、私だって言いたかった」
僕はゆっくりと立ち上がると、ちゃぶ台を迂回して彼女へ歩いていく。僕が近づくと、彼女も立ち上がった。
そして、静かに抱き合った。
庭から差し込む緑の光が、僕らを柔らかく包んでいた。


魅惑的ってなんですか。

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  1. 2011/06/08(水) 12:04:11|
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プロフィール

可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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