弐つの遊戯卓

【五年目】 毎日頑張ってやりくりしていきてます。物書き、音ゲーと合唱やってます。最近DTMとか始めました

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保護及び対策課その参拾六~ラブコメ編~

参拾六
「ん……。」
 ぽつんと一人廊下に残されて、乾いた風が足元を突き抜けていく。かさかさと、空いた窓から葉っぱが触れ合う音がしてくる。
 い、いや、ここは普通に体育館に戻るべきなんだろう。怪訝そうな顔をする社会教師に向かって満面の笑みで「お騒がせしましたぁっ」的なことを言って、やりすごして体育館内におずおずと入っていって、またあの校長の無駄すぎる無駄話を聞けばいいんだ……。
 と、頭の中では理解してるのに、取らぬタヌキの皮算用的に体が動かない。なんで?
 もちろん……ヤツだろうな。二回目だよ。見られたの。蚤の所為で。はぁ……。
 頭の中で嘆息しつつ、体は木であてられたかのようにまったくもって動かない。というか、勝手にちらちらと武寛が消えたトイレの方を見ている。目が。
 何か決定的要素を振り払うように、頭をぶんぶんと振って、自分の進むべき道を見据える。うん。さっき考えた行動をすればいいんだ。うん。
「何してんだよ。」
 心臓が跳ね上がって食堂からせりでてきても、「病死」で済んでしまいそうなくらい驚いた。思わず振り返ると、白い翼の合間から、武寛の顔が見えた。こ、ここはなんとしてでも乗り切らないと(ごまかさないと)。

「な、なにって。ま、待っててあげたのよ!」
「は?別に頼んでないんだけど。」
 俗に言うツンデレ作戦失敗。てか、あっちも相当捻くれてるから、こういうのが通用しないんだ。ってか私が馬鹿なだけかも。
「ゴミ掃除してたの!これで!」
「ふぅん……の割には汚れてねえみたいだけど。」
 普通に一瞥してくる。やっぱりおかしい。これを「個性」で片付けてしまえば、通り魔大量殺人した人の心境だって「個性」で片付いちゃうじゃない。まぁ……意味は大分違うけど。
「床じゃなくて……」
「そうかい。さっさと戻るぞ。」
 さりげなく一緒に戻るぞ的なことを仄めかす言動に目を白黒させながら、慌てて彼の隣につく。いや、別に隣じゃなくてもいいんじゃない!?と、私の本能が言ってくるが、取り合ってられない。……なに考えてるんだか。
「何で戻してるの。」
 武寛は、体育館までの長い渡り廊下を歩いてる最中に、崩した制服をせっせと直している。そういう無駄な(校長よりはマシ)行動を不可解に思って訊いてみたのだ。
「何でお前はそれ戻さないんだよ。」
 そう訊き返されて、慌てて私は背中にある白いのを背中に収納する。ちなみに、どうして制服が破れないのとか訊かれても困る。仕様なのだからしょうがない。
「そうやってバレたく無いのを隠すのと一緒だ。多分。両方とも見られたくないものだろ。」
「隠す意味が違うと思うけど……。」
 ぼそりと呟いたのだが、武寛は聞き逃さなかったらしい。
「んじゃ何でお前は隠すんだよ。」
 まぁ、一応こういう時のための回答は用意してある。どんな状況でどんな質問をされても、この類の質問なら無難な方向に流せる回答を用意してある。これは私が勝手に作っただけで義務ではない。
「苛められるのが嫌だから。」
「阿呆か。」
 私はぎょっとして、思わず足を止めた。武寛もつられて足を止めた。
 まさかの即答。しかも、そんな初対面の次の顔合わせで人に言うせりふじゃない。……やっぱり不味かったかな……これは。
「苛められるのが嫌なら何で生きてるんだよ。」
 下手に見解を間違えれば、それはちょっとマズイ方向への正の義が含まれた言葉。誤解だ。
「……なんでって。」
「俺から見れば、普通に友達とかと一緒に戯れてるのも苛めだ。苛めを正当化する奴らがよく言うじゃねえか。これは遊びだとか。そんなら、苛めを拒む必要はないだろう。」
 ……交差点で交通整理をしている人を撥ね飛ばした車が救急車だった。
 そんな皮肉な響きが今の言葉に含まれているような気がする。今のでなんとなく分かった。私の回答に対してのそのセリフに、さりげなく怒りが込められていたこと。
 恐らく苛められてたんだと思う。
 うん。それできっと、精神的に病んじゃって、私のこれをみてもなんとも思わなくなっちゃったんだきっと。
 私はそう心に判を押しながらも、どこか武寛の後ろ姿に翳(かげ)がかかっているように感じた。
「苛められてたの?」
「どうでもいいだろそんなこと。」
 親切心で訊いたのに、あっさりとばっさりと斬り捨てられた。とんがってやんの。
 体育館の入り口にようやく辿り付いた。なんというか、いつもなら短く感じるのに、長く感じた。どうしてだろうか。男の子と二人だけだったから……。
 全身全霊を込めて、私はため息をついた。いつから私は妄想家になってしまったんだろうか。
「桜木、大丈夫か?」
 社会教師がそんな風に気遣うような言葉を発しながらどこどこ走ってきたので、私は少し笑みを浮かべて肯定の意を旨とした言葉を返す。しかし、意識は武寛のほうに向けられていた。
「……俺にも個性があればよかったんだけどな……。」
 そう呟いたのが聞こえたような気がした。

「おかえり。」
 相変わらず落着かない、黒いもさもさしたものに載ってくつろいでる想が片手を挙げた。高貴な蒼眼狼さんも重くないのかしらね。
「ただいま。」
 私が力なく言うと、トリックが短く鳴いた。本人はとてつもなく、想に懐いてるらしく、プライドって言葉知ってますか?的な甘えた態度まで普通に、お茶碗にはご飯が載るくらい、ごく当たり前にしている。実を言うと、吸い込まれてそのまま吐き出されるような、その蒼い眼で睨まれると結構怖いんだけど、想を彼から遠ざけない限りは尻尾を踏んでも許してくれる。いい子だ。
「お姉ちゃん元気なさそうだけど大丈夫?やっぱりあれ、お姉ちゃんでも居眠りできなかった?」
 三年生の位置が、入り口側で本当に良かったと思った。そういえば同じ中学通ってたんだっけ……。そんな事言ったら泣いちゃうかもしれないから言わないけど。
「まぁ……あれも今年で見納めだから。すっきりした。」
「いいな。」
 短くそう言うと、トリックの背中を撫でながら(その背中に座ってるわけだけど)、コップに注いだ何かをストローを介して飲み始めた。
「何それ。」
「青汁。」
「そ……」
 どうして若者らしい飲み物を飲もうと思わないのかな。青汁だなんて。皮下脂肪を気にしてるおじさんが飲んでるイメージしかないから、想が飲んでるとひどくそぐわないんだけど。
「飲む?」
「……いらない。」
 こっそり飲んでみたことがあるけど、次の日は友人の前で息をしたくなかった。……だってこれオリジナルなんだもん。何入れてるの?これ。
 木の床に顎をこすりつけているトリックの頭を撫でてから、私は自分の部屋に向かった。きとと同じ簡素な部屋だけど、一応インターネットが使えるから、まぁこっちのほうが
格が上。
 ベッドに猫が炬燵に突入するように転がり込んで、少し居住まいを正してから翼を広げる。自分で言うのもなんだが、結構な質を持ったこの羽根一枚一枚の堅さを変えることが出来る。頑張れば全ての堅さを変えることもできるけど、提案した時点で粒子から抗議があがるだろう。大きさも自由に変えられるので、結果的に私は攻撃よりも防御に回ることが多い。何であんときは私が攻撃役に回ったのか分からないけど、とにかくそう。あんまし堅くしすぎると疲れるから調節は肝心。
 蚤が嫌いだなんて知らなかった。粒子がさっきの行いに対して、ふさふさと抗議を立てる。次からベッドとか布団で寝るときは気をつけなくちゃ。
 それにしても、アイツ。武寛のことが頭を妖しげな笑い声を立てながら支配する。
 二回目の今日はともかくとして、このまえ会ったときはビックリするのBの字も顔に晒さずに私と接していた。その点に関してはともかく、ぐるぐる巻きのがんじがらめに関しては許してないけどね。
 そんでもって、あの言葉。なんだか暗い過去を持っていそうだ。
 急に翼に掛かっていた抵抗が消えた。私は慌てて上半身を起こして、茹でたほうれん草みたいになった翼を抱きかかえた。
「……栄養不足……か。」
 ため息をついた。単に空腹を訴えているだけ。
 よろよろと立ち上がると、私は想が相変わらずトリックを下僕として支配している居間に向かった。翼が全体重をかけてきているようで重い。付け根のあたりが特に。ちぎれちゃうんじゃないの?
 別に想から青汁を貰うつもりではなかったんだけど、台所が居間と同じ部屋にある所以(オープンキッチンってやつ?)、避けては通れない場所に居座っているもんだから、普通に顔を合わせることになる。
「どうしたの?」
「栄養補給。」
「早いね。乱用したからじゃないの?」
「血を吸われたからだと思う。」
 さりげなく青汁を飲め、と何かを悟った聖人みたいな濁りの無い顔を向けてくる。そんなに青汁中毒者増やしたいですか。
「歯磨きすればバレないよ。」
 さりげなくバレてるし。あなたにバレた時点でもう駄目だと思うけど。
 冷蔵庫を開けて、滋養強壮剤と銘打たれた茶色い瓶を取り出す。これで今週分のストックは零。また買ってこないと。いつこうなるのか分からないから先をみすこして買わないと。
「おいしい?それ。」
「そこそこ。」
 実はトッテモマズイんだけど、それよりはマシ。という皮肉の意味をこめてのそこそこなんだけど、餌に釣られて罠にはまるような、清純そうで餌目当てという腹黒さをこめた顔には通用しなかった。きっとこういう武器があることも知らないんだろうな。
 結局のところ、しんなりしているのは粒子な訳で、翼ではない。こうして体内に取り込めば、吸収媒体にたどり着く前に勝手に粒子がこの黄色い液体に含まれている栄養素を抽出して、取り込んでくれる。厄介なのやら便利なのやら。
 ゲームのしおれた植物に何かをするとみるみる復活するみたいに、翼に色が戻ってくる。しんなりしていた翼の質も格段に上がって、羽毛布団さながらの(喩えに残虐な表現が含まれています)ふかふかさ。上出来。
「相変わらず謎だよね。」
 あなたのその碧い液体の方が謎です。
 と、突っ込もうとしたときに、チャイムがペーペー鳴った。家はでかくて新しいんだけど、チャイムは面倒だし意味わかんないからいっか、とかいう弟子の不祥事並に理不尽且つ無責任な理由でチャイムはそこらへんの安アパートについているような一級品(皮肉属性)。
「はぁい。」
 ぱたぱたと木の床を靴下を介して踏みつけながら玄関へ向かう。
「こんにちはぁ。」
「こ、こんにちは。」
 居たのは、私より少し背の高い、モデルさんみたいな顔をして深く帽子をかぶった女の人。足首辺りまであるロングコートをステキ且つ可憐に着こなしている。
「ぇぇ……と。どなたで……」
「ここに弟がいない?」
 弟?ここは動物屋敷であって、そういった施設じゃないんですが。
「えっぇとねぇ。うん。ほら。飼ってたじゃない。猫さん。」
「きとのこと?」
「うん。そうきと。」
 え……この展開はまさか……。感動の再開フラグですか。
「そぅなの。私はきとのお姉さんであって、彼はまた私の弟ってわけね。」
 ぱっと帽子をとると、そこには黒い耳があった。ロングコートのスリットから尻尾をのぞかせる。ふぅん……確かにそれっぽい。
「私も、いつのまにか人間になっちゃってたんだけど、弟もそうだって噂を耳にしたから探してたの。そしたらここに辿り付いたってわけ~。」
「う、ん……それで……?」
「うん。だからね、一緒に住ませて~。」
「あ、うん。いいよ。」
「ありがと~」
#誰か突っ込め!(あ、スミマセン
 どうやら訳ありの様子で、部屋も余ってるしきとのお姉さんなら別にいいかなぁ的な発想でとりあえず彼女を家に上げた。
 んでもって、居間につれていくと、想がこちらを向いて密林でライオンに出会ったように顔を硬直させて、口端に咥えていたストローを落っことした。更に、その下にいなり寿司が寿司の一種であるくらい当たり前に、小さくない狼(犬に見えなくも無いけど)がいるわけだから、彼女もまた砂浜に鰯の大群が打ち上げられたのを見た地元の人のように硬直していた。
「こ、こんにちは」
「ここ、こんにちは……」
 両者ともぎこちない挨拶を交わすのを見るとなんとも面白い。こういうのはやっぱり仲介の立場が一番いいんだよね。
「とりあえず座って座って。」
 両手をぴゅっぴゅっとやって座ることを促すと、私もソファに見を沈めた。きっとこんなに沈むのはこれが高級品だから。

 ……またか。
 渋々顔を上げると、もうそこがレギュラーポジションになってしまったかのように、社会教師の顔があった。そろそろ名前覚えてあげようかな。もう名前覚えてやろうと思って三年目に入ってしまった。
「桜木、普通選挙法が制定されたのはいつだ?」
 ……
「めめめめめめめ、明治時代です。」
「そうだな。」
 それでいいのか。
 私はため息をついて、もう一回両腕で輪を作って、そこに顔を埋めた。プールから上がったばかりだから、消毒薬の匂いがかすかにして鼻がむずがゆい。このかゆさがなくなった時点で睡魔の勝利。
 昨日は、帰ってきたきとが自称姉と会って、最初は考えていたものの、信用する意向を示した。なんかよく分からないけど、いろいろ複雑な事情があるらしい。確かに猫とか色色事情がありそうだもんね。育児放棄とかニュースでよくやってるし。ホントに子孫残す気あるのかな。
 とりあえず、想の友達から貰ってきたコレクションを全て地下のワインセラーに放り込んで、部屋を無理やり作って料理を作ってあげてから寝た。初めてきとが来た日、私は相当料理が下手だったんだけど、おかげさまで随分上手くなった。気がする。
 …………。
 渋々顔を上げると、ゼロコンマニセンチもずれない位置に、いつものしかめっつらに見える普通の顔があった。
「桜木、明治じゃないだろう」
「あぁぁっぇっとですね。そのプラマイ百年以内ですー。」
 結局、沸騰するんだから……。これ日課になってない?
 そんなふうな経緯で沸騰したクラスに、福音が轟いた。教師である彼も、早く終わらせたいらしく、混乱を湛える私を卵の殻みたいに投げ捨て、教卓につく。そしていつものように号令係の機械的且つ事務的な号令が掛かる。
 ぼんやりと席を立ちながら、窓越しに外の茶色に染まった木々の葉っぱを見た。
 ──文化祭……か。

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  1. 2008/09/11(木) 20:35:35|
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可児 珊士

Author:可児 珊士
大学生。
元音楽(合唱)部員。旧BASS。
ギターが欲しい年頃。
作家志望。
本陣:埼玉
カラオケ行くと声的な意味で別人化。

アイコンは柊氏より頂きましたΣd(゚∀゚d)

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